『112日間のママ』には、こんな記述がある。

《「すぐに手術、そして治療に入りましょう」
 この言葉の意味することは、
「出産を諦めるのか、諦めないのか」》

 清水アナが言う。

「奈緒が亡くなってから、日記が出てきたんです。B5くらいの大きさで、かわいいお人形が表紙のノートで、闘病中は、突然入院したこともあって日記を持って行けないこともあったんでしょうね、走り書きのある紙切れもはさんであったり…。思い切って開いた1ページ目に『健さんが、私が死ぬことを前提に考えていることがすごく悔しい』って書いてあったんです。これはぼくが今、いちばん後悔していること。『一緒に頑張ろう』『そんなデータ関係ない。おれたちなら大丈夫だよ』って、なんで言ってあげられなかったんだろうって…」

◆妊娠中の抗がん剤投与

 この子を産みたい──そんな奈緒さんの思いが、清水アナだけでなく周囲を動かした。滋賀県にある乳腺クリニックが、「3人で生きたい」という思いを受け止めてくれたのだ。

 奈緒さんのステージは、超音波検査などから「II期」以上。すでに遠隔転移している疑いも拭えなかった。きちんと調べるためにはCT検査やMRI検査が欠かせないのだが、赤ちゃんへの影響を考えるとそれを行うことができない。しかも進行の早いトリプルネガティブ。それらを踏まえ、奈緒さんの治療方針が「手術→抗がん剤→出産→CT・MRI→抗がん剤→放射線治療」と決まった。

 ここで妊娠中の抗がん剤投与に驚かれたかたもいるだろうが、実は妊娠中に抗がん剤を投与した際、赤ちゃんにどんな影響があるのかというデータがそろったのは最近だという。というのも、抗がん剤治療が始まったのは1960年代からで、妊娠している女性に抗がん剤を投与したデータが出たのが1999年。前出の山内医師によれば、そのデータを受け、聖路加病院でも妊娠中の乳がん患者に対する抗がん剤治療を行える体制を整えてきた。

「妊娠初期(16週目未満)に抗がん剤を使うと子供の成育に影響を与える可能性が高いので手術は行えますが、抗がん剤治療はできません。またいつ赤ちゃんが生まれてもおかしくない状態の妊娠35週目以降も、基本的に抗がん剤治療は行いません。抗がん剤治療を行うと2週間ぐらい、白血球が下がるので、その時に出産して感染症にでもなったら大変なことになるからです。逆にいうと、妊娠中期(妊娠16週~28週未満)であれば抗がん剤治療ができるのです」(山内医師)

※女性セブン2016年2月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン