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67才で直木賞受賞の青山文平氏「純文学のつらさ身にしみる」

【著者に訊け】
青山文平さん/『つまをめとらば』/文藝春秋/1620円

【内容】
 冒頭の「ひとをうらやむ」は、主人公の武士が、誰もが羨む女性と結婚した友人から、夫婦関係についての深刻な悩みを打ち明けられる。「つゆかせぎ」は、亡き妻が戯作を書いていたことを知った武士が、雨の日に春をひさいで子供を食わせる、“つゆかせぎ”をする女と知り合い、世の中の自明にふと気づく──など、男と女の生きる姿を描いた6作を収録。「作品の舞台にした18世紀後半から19世紀前半は、平和ではあるが閉塞感の巣食う地味な時代で、現代と似ていると思っています」(青山さん)。

 無名武士の素朴な結婚観を描いた時代小説で史上2番目の高齢となる67才で直木賞を受賞した青山文平さんは、40代半ばから約10年間、会社を辞め、純文学を書き続けていたことがある。デビュー作『俺たちの水晶宮』で第18回中央公論新人賞を獲得したが、以降は文芸誌に短編が数本掲載されただけで、筆を折った。

「大学卒業後は経済系出版社でコピーライターの仕事をしていました。手前味噌ですが、才能はあったと思う。いいスキー板を手にしたら滑ってみたくなるのと一緒で、ぼくも自分の優れた『道具』を使ってみたくなった。それも、やるからにはいちばん難しい純文学に挑もうと。純文学が難しいのは、何でもありだからです。

 書くために、作家らしい生活をしなければと酒が好きでもないのに朝まで飲んだり、お金は貯金をせずにあるだけ使った。でも50代半ばで貯金なしは辛い…。精神的にも、身体的にも限界だった。だから辞めたときはすっきりした」

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