──Aが頻繁に居場所を変えるのを支援しているのではないか。
「なにも申し上げることはありません」
──Aが部屋を借りる際に保証人になったりしているのではないか。
「コメントはありません」
何を聞いても、そう繰り返すのみだった。
支援の実態は明らかではないが、一方で専門家からは直撃取材を受けたAが見せた激しい反応について、懸念の声があがっている。犯罪者の心理に詳しい、臨床心理士の矢幡洋氏が解説する。
「記者とのやり取りをみると、いまだに彼の過剰な攻撃性は矯正しきれていないといっていいでしょう。
また、記事からは彼の自己愛とそれに基づく演出が読み取れます。直撃取材を受けて、Aは実は喜んでいたのではないでしょうか。記者に声をかけられても最初は『違います』と微笑を浮かべていたといいますが、こうした余裕の笑みに自己愛や自己顕示的なものが感じられます。
その後の反応も、キレているようで、自分の見せ方を意識しながら行動している面もあります。わざと露悪的に振る舞って、少年Aという“ブランド”を作り、自著やメルマガを売る。犯罪ブランドを利用してもっと利益を得ようとしているのではないか」
たしかにAは手記出版後も、昨年8月に複数の出版社宛てに手記執筆の経緯を綴った長文の手紙を送りつけ、同時に自身の公式HP立ち上げを宣言した。以後、不定期でブログを更新するなど、目立とうとする意思を隠さない。
1997年に当時14歳だったAにナイフで腹部を刺されたものの、奇跡的に生還した被害女性・織田史子さん(仮名)の母親は静かにうなだれる。
「Aにはとにかく、ただ真面目に静かに生きて、少しずつ償いを果たしていってほしいと思っています。なのになぜこんな風に目立とうとばかりするのか……」
Aを巡る環境は、本当にこのままでいいのか。
※週刊ポスト2016年3月4日号