これまで人生を共にしてきた伴侶を失ったばかりの妻にのしかかる幾重もの責任と手続き。突然夫を亡くした時、妻は自分でしか解決できない問題にどう向き合ったらいいのだろうか?
2年前の夫との別れは突然だったとA子さん(45才)は言う。出かけた先で不調を訴えた夫は、搬送先の病院で心筋梗塞のため亡くなった。50才だった。2か月前に受けた会社の健康診断では何の問題もなかったという。
「お通夜でも葬儀でも、涙が出ることはありませんでした。現実に起きたことだとは、思えなかったんです」(A子さん)
悲しみが襲ってきたのは、それから1週間ほど経ってから。夫が亡くなった現実に気づいて、涙が止まらなくなった。
「食事がのどを通らなくなって、どんどんやせていきました。娘がスプーンで私の口を無理矢理こじ開けようとしたこともありました。心配した友人が病院へ連れて行ってくれたのですが、会計の時に『この保険証は使えません』と言われたんです。夫の会社の健康保険だったので、そこでも、『ああ、夫が亡くなった』と思い知らされました」
それから1か月間、家から一歩も出られなかったという。
「ご近所さんや知り合いにお悔やみを言われたくなかった。夫が亡くなったことを受け止めたくなかった、考えたくなかったのです。ずっと主人の遺影の前に座っていました」
現在はパートをするまで復帰したが、今も心の整理はついていない。
「仲睦まじいご夫婦を見たら、涙が出てくることもあります。先に亡くなった夫を恨んでしまうことさえあります。いつになったら心が落ち着くのでしょうか…」(A子さん)