国内

人々を惹きつけるアドラー心理学 原因ではなく目的を考える

多くのアドラー関連本が書店に並ぶ

「アドラー心理学」に関心が集まっている。『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)が大ヒットしたことを契機に、書店では特設コーナーが組まれたり、企業や教育現場でもアドラーに関するセミナーが開催されたりする大盛況ぶりだ。なぜ、ここまで人々を惹きつけるのか。

 アドラー心理学において最も重要な考え方が「目的論」である。アドラーは欧米では精神分析の創設者・フロイトやユングとともに「三大巨頭」と並び称される。ユングとフロイトは「原因論」を唱えたが、アドラー心理学はそれと対極の意味合いを持つのが特徴だ。

「原因論」が「感情や行動は過去の原因から生み出される」と考えるのに対し、「目的論」は「すべての感情や行動は目的を達成するために生み出される」とする。

『嫌われる勇気』の共著者の一人で、日本アドラー心理学会顧問の岸見一郎氏は、「アドラーはどんな行動にも『目的』があると考えている」と語る。ここでは「怒り」を例に考えてみよう。感情表現である「怒り」は一見、コントロールできない衝動のように思える。しかし、

「人間は“ついカッと”なって怒るのではなく、“大声を出して相手を支配しようとする”といった具合に、何か目的があって怒りという感情を生み出すと、アドラーは考えます」(岸見氏)

 このアドラーの提唱する目的論をとると、問題解決の糸口が見えてくる。

『アドラーに学ぶ職場コミュニケーションの心理学』(日経BP社)の著者で組織人事コンサルタントの小倉広氏が、職場での具体的な相談事例を基に解説する。

「叱った後の部下が職場でしょんぼりとした顔をしていると、上司はつい“あの時言い過ぎたかな”などと『原因』を探して疲れてしまいます。しかし叱ってしまったことは変えられないので、『原因は何か』を考えても何も生み出さない。

 そうではなく、部下が暗い顔をしている『目的』に目を向けましょう。本当に心から反省しているのか、単に上司への当てつけのために“しょんぼりアピール”をしているのか。それを判断し、前者なら別の場面で気にかけてあげて、後者なら受け流してしまえばいい。そうすれば、必要以上に悩むことはなくなります」

 アドラー心理学を活用した片付けを提唱する、ホームオーガナイザーの丸山郁美氏もこう話す。

「部屋をなかなか片付けられない人は『部屋に物が多いから』、『自分の性格がだらしないから』と原因を探してしまい、悪循環に陥る。そういう時こそ『なぜ部屋を片付けたいのか』という目的を考えてみてください。

『綺麗な部屋で夫や子供を喜ばせたい』という目的を意識すれば、イライラが減り、その目的に合わせてどう掃除して収納するかまでイメージできるのです」

※週刊ポスト2016年3月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン