ライフ

日本の「女人禁制」の地 なぜそこに入ってはいけないのか

 今なお日本には、女性もしくは男性に限って立ち入ることのできない聖域がある。「女人禁制」「男子禁制」と呼ばれる文化的伝統ではあるが、現代においては「性差別」とのそしりを受けることもある。こういったタブーはなぜ生まれたのか? 慶應義塾大学名誉教授の鈴木正崇氏が解説する。

 * * *
 女人禁制は、狭義には信仰に関わる慣行で、女性に対して寺社や山岳の霊地、祭場への立ち入りを禁じ、女性の参拝や修行を拒否することであり、山の境界は女人結界と呼ばれた。

 女人禁制の歴史は古く、いわれも複雑だが、大きく分けて次の3つの要因を挙げることができよう。

 1つ目は、男性の修行の妨げになるからという禁欲主義に基づく考え方である。古来山は信仰の対象であり、畏怖の念をもって拝むことが通常で、山頂に登ることは禁忌であった。日本の山岳信仰と仏教の山岳修行が融合して修験道(*1)が普及すると、山は神聖な場所であると同時に厳しい修行の舞台になる。その修行の場から、性的な欲望を掻き立てる存在としての女性を排除しようと考えたのだ。

【*1/山を歩くなどして霊力を身に付けようとする実践のこと】

 2つ目は、「穢れ」という概念に関わる。穢れ(不浄)とは、程度の差こそあれ多くの文化で世界的に見られる観念であり、穢れたものに触れると穢れは伝染するとされている。

 日本では穢れには死を意味する黒不浄、出産を表す白不浄、経血を表す赤不浄の3種類が存在するといわれる。そのうち特に女性は血の穢れである白不浄と赤不浄の2つと切り離せないことから、女性が不浄とされた。こうした穢れや不浄の問題は極めてデリケートな問題であるが、血の穢れを重視する『血盆経』(*2)が室町時代以降に普及して禁忌が強められた。

【*2/仏教の経典の一つ】

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン