過去に問題になった事務所費疑惑には、第一次安倍政権の閣僚だった「バンソーコー大臣」こと赤城徳彦元農水相の架空計上疑惑など様々な手口があったが、無償や格安家賃での事務所提供もその一つだ。
2007年8月には二階敏博・自民党総務会長が支援者から事務所を無償提供されていたことが問題化し、収支報告書の訂正を迫られている。政治資金規正法を所管する総務省の副大臣である松下氏が「知らなかった」では通用しない。
事務所を貸すA社のP会長を直撃すると「家賃が5万円」であることは認めたが、「格安ではない。25万円で他のフロアのテナントを募集しているなんて知らない」と反論した。
ところが、テナント募集のサイトを見せると、「あー、本当だ。25万円だ。しかし、こんなのは見たことがないよ。初めて見た」と答えに詰まり、「ただ、あそこの2階は仕切りを入れている。その一つを貸しているだけだ」とも釈明した。
松下事務所も取材に対し、「家賃を支払っている賃借部分は2階フロアの4分の1弱の面積であり、壁で仕切って事務所としている。相場より格安で借りているという事実は全くありません」と回答。A社も同様に答えた上で、「家賃も市況からすれば高めだといわれることはあれ、格安だという人はいません」と加えた。
しかし、地元事務所で働いていた複数の元秘書は、「薄い壁で仕切られていたが、フロア全部を松下事務所が使えた。メインで使う事務所スペース以外のところの扉に鍵はかかっておらず、倉庫代わりにできたり、支部の総会で自由に使えた」と実態を証言した。
松下氏のHPを見ても「事務所ではない」はずのスペースにポスターや額に入った写真が飾られ、会合などに使っている“証拠写真”がアップされている。
そのことを重ねて問うと松下事務所は、「年に1~2回、会合のために借りている。費用は家賃の範囲内でいいという話になっている。その他にも一部のスペースを区切って使っているが、わずかなスペースなので、家賃の範囲内というかたちだ」という説明だった。
※週刊ポスト2016年4月22日号