乱世に終止符を打ち約300年の幕藩体制を築いた徳川家も刀を集めた。なかでも名刀コレクターとして知られるのが徳川家康である。家康のもとには信長や秀吉が保有していた名刀群が数多く集まった。加藤清正から献上された「日光助真(にっこうすけざね)」は家康を東照大権現として祀る日光東照宮の無二の神宝となり、徳川幕府の守護刀となっている。

 これらの名刀が最後に集まったのは明治天皇の下であった。やはり皇室が手にすることになるというのもまた感慨深い。

 つまり、名刀と呼ばれる刀は、歴代の所有者の権威のもとに価値が付与されてきたものなのである。こうした権威を継承、或いは強奪し権力の座についた者が新たな所有者となり、さらなる価値を重ねる。権力者たちが代々伝えることによって、名刀は名刀となっていったのだ。

●まき・ひでひこ/1969年東京都生まれ。早稲田大学卒業。企業勤務を経て執筆活動に入る。『剣豪全史』『名刀 その由来と伝説』(いずれも光文社新書)など著書多数。全日本剣道連盟居合道五段。

※SAPIO2016年5月号

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