コラム

IPO株の東証1部への市場変更 マザーズ銘柄に有利な仕組み

 夏前にも上場が予想されているLINEなど、今年も様々な分野の有力企業がIPO(新規上場)することが期待されているが、IPO投資で利益を出すにはどうすればよいのか。IPO株を公募価格で手にするにはまず、幹事証券会社に口座を開き、その上でブックビルディングに参加すれば抽選で入手することができる。

 あるいはたとえ公募価格で入手できなくとも、上場初値がついた後に購入してその後の値上がりを狙う「セカンダリー投資」もある。

 そしてもうひとつ注目したいのは、IPO銘柄の市場変更、つまり“鞍替え”を狙った投資法だ。投資情報サイト「IPOジャパン」編集長で、IPO投資の第一人者として知られる西堀敬氏が解説する。

 * * *
 IPO銘柄への投資法としては、上場直後の投資のみならず、上場後1~2年経った段階で新興市場から東証1部へ市場変更するタイミングを狙うのも有効だ。そうした可能性の高い銘柄を先回りして仕込めれば、大きなリターンも期待できる。

 IPO企業が新興市場に止まる限り、個人投資家中心の株主構成にならざるを得ない。機関投資家がIPO銘柄を買うのは難しく、売り買いの需給が盛り上がらずに、株価はバリュエーションの低いままで放置されることが多くなる。

 IPO株がこの状態から抜け出すためには、株主の大半が個人投資家から機関投資家に変わることが何より重要だ。そして、大口資金を運用する機関投資家は、投資対象を東証1部上場銘柄に限定し、ある程度売買代金のある銘柄を投資対象とするケースが多い。そのため、新興市場に上場していた企業が、東証1部に市場変更すると、一気に株主の構成が変わって、機関投資家の買いで株価が大きく上昇することがある。

 直近の例を挙げてみよう。電力小売りを手がけるイーレックスは2014年12月に東証マザーズ市場に上場し、ちょうど1年後に東証1部への市場変更を果たした。その情報を材料に、昨年11月上旬は1200円台で推移していた同社の株価は上昇を開始し、今年1月6日には2345円の高値をつけている。

 動画配信サービスを手がけるU-NEXTも、2014年12月の東証マザーズ上場からちょうど1年で東証1部に市場変更した。それを手がかりに同社の株価は、昨年11月につけた1058円の安値から1か月後には1687円の高値をつけるまで高騰した。

 東証1部へ市場変更する場合は、その期において10億円前後の経常利益を出していることと、業績開示情報で数値修正を行なっていないことが最低条件といわれる。

 ただし、同じ新興市場でも、東証マザーズ上場企業が東証1部に市場変更する際の時価総額基準が40億円となっているのに対し、ジャスダック上場企業の場合、直接東証1部にIPOする場合と同じ時価総額250億円以上という基準が適用される。

 つまり、東証マザーズ銘柄は市場変更が比較的容易で、IPO後1年での市場変更も十分あり得るのだ。したがって、市場変更を先回りして仕込む戦略としては、東証マザーズ上場の銘柄を狙うのが得策といえる。

 もちろん、これから上場してくるIPO銘柄も、その業績を確認しつつ、早ければ1年後の市場変更を狙って株価が落ち着いたところで仕込んでいく戦略も有効だろう。

 IPO株が公募価格で手に入らなかったからといって、あきらめる必要はない。その後の投資チャンスを逃さなければ、大きな利益を手にすることも十分に可能なのだ。

◆西堀敬(にしぼり・たかし):1960年生まれ。投資情報サイト「東京IPO」編集長(2002~2015年)を経て、投資情報サイト「IPOジャパン」編集長に。IR説明会、セミナーなども多数行なう。著書に『最新版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』など。

※マネーポスト2016年春号

トピックス

日米通算200勝を達成したダルビッシュ有(時事通信フォト)
《ダルビッシュ日米通算200勝》日本ハム元監督・梨田昌孝氏が語る「唐揚げの衣を食べない」「左投げで130キロ」秘話、元コーチ・佐藤義則氏は「熱心な野球談義」を証言
NEWSポストセブン
ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
女性セブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト