ライフ

本屋大賞『羊と鋼の森』 大自然での暮らしから生まれた作品

 第13回本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』の著者・宮下奈都さん(49才)が作家デビューをしたのは36才のとき。当時、主婦だった宮下さんは、どうやって今日に至ったのだろうか?(取材・文/佐久間文子)

 * * *
 話題作ぞろいの候補10作の中から本屋大賞に選ばれたとき、宮下さんは、驚いたあとで不安な気持ちに襲われたという。

「私の本が大賞でいいの?って。でも、授賞式で推してくださった書店員さんたちの笑顔を見て、不安なんて言ったら失礼だ、素直に喜んで賞をいただくのがいちばんいいんだって思いました」

 福井在住なので、地元の書店以外はあまり書店を回ったりもできない。

「それでも応援してくださるのは、本当にありがたいし、うれしいです。私は、書店員さんは読者の代表だと思っているので、この人たちを裏切るものは書けないな、という気持ちになります」

 思えば、宮下さんの『スコーレNo.4』という小説も、書店員たちが独自にこの文庫本を売ろう、とツイッターで盛り上げたのだった。

「これまでは、せっかく薦めてくださっても、私の本はそんなに売れなかったので、本屋大賞に選んでいただいたことで、やっと、少しはご恩返しができるんじゃないかといううれしさもあります」

◆何かやらないと人生は子育てに塗りこめられる

 大学卒業後に勤めた会社で知り合った4才年上のご主人と結婚、専業主婦になった。高校生の男の子2人と中学生の女の子の母親でもある。初めて小説を書いたのは2004年、長女を妊娠中のときで、文學界新人賞に応募して佳作に選ばれ、作家デビューした。

「ホルモンの影響としか思えないんですけど、今何かやらないと、私の人生は子育てに塗りこめられてしまう、って気持ちに突き動かされたんです。夫は仕事がすごく忙しくて、全部自分でやらなくてはいけない。2人なら手をつなげるけど、3人目はどうしたらいいの、って不安で、そうやって子供が生まれることを否定的にとらえてしまう自分もいやでした」

 あのとき必死につかんだのがなぜ小説だったのかは、今もわからないという。

「紙と鉛筆があれば書ける、というのは大きいけど、もし目の前に刺繍の道具があれば刺繍だったのかも。書くことはすごく楽しくて、ずっとホルモンが出続けているんですかね(笑い)」

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
《不動産投資会社レーサム元会長・注目の裁判始まる》違法薬物使用は「大きなストレスで…」と反省も女性に対する不同意性交致傷容疑は「やっていない」
NEWSポストセブン
女優・福田沙紀さんにデビューから現在のワークスタイルについてインタビュー
《いじめっ子役演じてブログに“私”を責める書き込み》女優・福田沙紀が明かしたトラウマ、誹謗中傷に強がった過去も「16歳の私は受け止められなかった」
NEWSポストセブン
告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
《たった一言で会場の空気を一変》「チームみらい」の躍進を支えた安野貴博氏の妻 演説会では会場後方から急にマイクを握り「チームみらいの欠点は…」
NEWSポストセブン
中国の人気芸能人、張芸洋被告の死刑が執行された(weibo/baidu)
《中国の人気芸能人(34)の死刑が執行されていた》16歳の恋人を殺害…7か月後に死刑が判明するも出演映画が公開されていた 「ダブルスタンダードでは?」の声も
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏(共同通信)
《“保守サーの姫”は既婚者だった》参政党・さや氏、好きな男性のタイプは「便利な人」…結婚相手は自身をプロデュースした大物音楽家
NEWSポストセブン