芸能

オダジョー、40才の変化 人情派演じる姿に「円熟味出た」評

オダギリジョーが人情派の副編集長を演じる(『重版出来!』公式HPより)

 話題のドラマ『重版出来!』(TBS系)に出演しているオダギリジョー(40才)。漫画雑誌の副編集長役を好演しているが、これまでずっとオダギリの活動を見てきたテレビ解説者の木村隆志さんは、その演技にある変化を感じるという。木村さんが解説する。

 * * *
 オダギリジョーさんのイメージと言えば、ワイルドやミステリアス。個性的な髪型やヒゲ顔もあって「和製ジョニー・デップ」と言われ、さらに、独自の存在感が“オダジョー”という略称を生み、変人や犯罪者などの「クセの強いイケメン」役を演じてきました。

 そんなオダギリさんが『重版出来!』では、これまでの「いかにも“オダジョー”」というクセの強いイケメンではなく、人情派の役を演じています。

オダギリさん演じる五百旗頭敬は、ヒロインの黒沢心(黒木華)が務める漫画誌『バイブス』の副編集長。猪突猛進タイプの心を指導係として温かく見守り、毎話のラストシーンでは小料理屋でお酒を飲みながら優しく語りかけています。

 私が驚いたのは、オダギリさんが“年相応のほどよく枯れたサラリーマン”役をそつなく演じていること。長髪を束ねた髪型や脱力感こそこれまでと変わらないものの、新人に思い切りやらせたり、気づきを促すひと言をかけたり、自分の背中を見せたり、優しい気づかいのあふれる中間管理職のサラリーマン像は、新境地と言っていいのではないでしょうか。

 今作でのオダギリさんを見て感じるのは、いわゆるイケメン主演のオーラではなく、シブい助演の円熟味。セリフの量は少なくても、その立ち居振る舞いだけで、作品全体のハートフルな世界観を体現しています。

 思えば、昨年秋に放送された深夜ドラマ『おかしの家』も、昭和の人情を感じる作風と役柄でした。ここでもオダギリさんは、祖母と友達思いで、幼なじみのシングルマザーと結婚する人情派の主人公役を演じていたのです。

 しかし、かつてオダギリさんは、主演ドラマ『ぼくの妹』のPRで出演した番組で、「映画は大切なもので、テレビはお金を稼ぐもの」と言い切り、一昨年にも主演ドラマ『リバースエッジ 大川端探偵社』の会見で「すごい低視聴率を取って『もうゴールデンは嫌だな。テレビをやるなら深夜かWOWOWだな』と思っていました」とぶっちゃけるトガったキャラでした。

 そんなキャラが変わりつつあるのは、年齢によるところが大きい気がします。オダギリさんにとって『重版出来!』は、40代に入って初めての出演ドラマ。自身、原作マンガを読んで「マジで泣きました」と、照れ屋のオダギリさんにしては珍しくストレートな感情を表に出していました。人情派の役を立て続けに好演しているのは、アラフォーの今だからこそ得られた感性があるからでしょう。

 もう1つ見え隠れしているのは、家族の存在。オダギリさんは、俳優として役のイメージを邪魔しないように、家族の話はほとんどしません。ただ、今作の演技中に見せる優しい眼差しに、父親のような慈悲がにじみ出ていますし、それは4月からEテレの子ども音楽教育番組『ムジカ・ピッコリーノ』に謎の男役で出演しているという事実からも感じられます。

 オダギリさんのもとに2人の男児が誕生したものの、昨年4月、1歳の次男を病気で失うというつらい出来事がありました。短い期間で大きな幸せと悲しみを体験したオダギリさん。その演技に変化が生まれているのは、当然なのかもしれません。

 今後もイケメンとしての側面だけでなく、ときに「頼れるアニキ」のような立場から、ときに「懐の深いパパ」のような立場から、人情あふれる演技を見せてくれるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン