野球賭博、闇カジノ、覚せい剤……。スポーツ選手らによる不祥事が立て続けに起きているが、こうした事件が発覚する度に問題となるのが、当事者に常習性がどの程度あったのかという“依存度合い”だ。
依存が問われるのは違法行為だけとは限らない。パチンコやアルコール、たばこ、コーヒー、ネットゲーム、買い物など、最近では日常生活に溶け込んだ合法的な行動に至るまで、ハマればすぐに「○○依存症」と見なされる風潮さえある。
いったい依存症の定義とは何なのか──。『依存症のすべて』著者で行動薬理学に詳しい廣中直行氏(医学博士)に聞いた。
──そもそも「依存」と「依存症」の違いは何か。
廣中:依存という言葉自体は、単に「頼っている状態」を表しているだけで、そこに良い悪いといった意味合いは含まれていません。仕事にばかり打ち込むのも、エクササイズに熱中し過ぎるのも、見かけは依存に当てはまります。
しかし、何かの行為が止めるに止められなくなり、学校や職場での活動に支障が出たり、体を壊して日常生活が立ち行かなくなったりと、困った状態に陥ると「依存症」または「嗜癖」といい、心の病気と考えます。
──パチンコやネットでも、日常生活に破綻をきたすまでハマってしまえば依存症になる。
廣中:そうです。この10年ほどの間にギャンブル、インターネット、買い物(浪費)など、薬物以外の対象にのめり込む心理も依存症と考えるようになりました。
自分の小遣いでは収まらずに借金をしてまでパチンコに通い詰める人、寝なければ体に悪いと分かっていながら夜を徹してネットゲームをしてしまう人……。とらわれた気持ちに歯止めが利かなくなり、「状況に照らして不適切」な行為を繰り返すようなら依存症につながります。
──酒やたばこといった嗜好品には、依存度合いを測る尺度はあるのか。
廣中:薬理学の立場からいうと、化学物質の依存性の強さ・弱さを比較する概念はありません。麻薬、覚せい剤、アルコール、ニコチン、カフェインとあまりにもいろいろな化学物質に依存性がありますので、一律の比較は無理です。やはり、人に着目して「どのくらいのめり込んでいるか」を調べるしかありません。
嗜好品として流通しているものは、適量の依存であれば日常生活が破綻しません。ただ、だからといって、その化学物質の依存性が弱いと考えるのは間違いです。
問題はその化学物質に接近する心理です。お酒でも香りや味、その場の雰囲気を楽しむために飲むのなら問題ありませんが、日頃の無力感やイライラ、ストレスを解消する目的で、「酩酊するために飲む」のは危険です。