誰もが知る良店には出会うには、大量の情報を丹念にさらっていけばいい。だが、いわばそれはネタバレのようなもの。大当たりを引いたとしても感動はいかばかりか。当たりとはずれの混在した町で「イチかバチか」を繰り返してこそ、大当たりを引くことができるのだ。
「習うより慣れよ」「百聞は一見にしかず」ということわざがある。そういえば、いま日米の野球界で話題のイチローが、以前テレビの対談番組でこんなことを言っていた。
「無駄な事って結局無駄じゃないっていう言葉が大好き。(中略)無駄に僕は飛びついているわけじゃないですけど、後から思うと無駄だったという事はすごく大事なこと」
無駄足を踏んでこそ見えてくるものがある。最近、都心から少し離れた町の店の前に、外観とは趣の違うメニューが書かれた黒板が置かれていると、つい扉に手をかけてしまう。意外と当たりが多い。