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『帝国の慰安婦』著者批判に熱中する日本の正義オタク

今年1月、朴裕河氏は初公判出廷(ソウル) YONHAP NEWS/AFLO

「オタク」とは何か。それは、強力な「排除の論理」を持っていることだ。ピンポイントな共通項で結びついたオタクたちにとって、仲間内での互いの批判は御法度だ。オタクは、異論や批判を加える相手を「敵」と見なす。

 そうしたオタクたちが活動するのは、何もアイドルやアニメ、ゲームといった世界だけではない。政治系、とりわけ「リベラル」を自称する左翼の世界にもオタクたちは存在している。アイドルオタクなどと異なるのは、リベラル左翼系の「オタク」は、自分たちが「オタク」であることに無自覚で、かつ否定的であることだ。

 最近、それが顕在化する出来事があった。韓国・世宗大の朴裕河教授が著した『帝国の慰安婦』をめぐる論争だ。この本は2013年8月に韓国で出版され、翌年には日本語版も出されて注目を浴びた。

 朴氏は、朝鮮半島で慰安婦が生み出された背景には家父長制など当時の社会構造があったなどと指摘し、慰安婦をめぐる解釈に一石を投じた。さらに、慰安婦問題に関わる日韓の運動体(=「リベラル左翼」)のあり方にも疑問を呈している。

 戦前の軍部をただ否定するだけでは解決をみない。高齢の元朝鮮人慰安婦のために、日韓が本当にすべきことは何か、を改めて問いかけたのだ。

 これに噛みついたのが、慰安婦問題をリードしてきたと自負する日本のリベラル左翼だった。

「植民地支配の犯罪性を無視している」
「資料の引用がデタラメすぎる」。

 朴氏に寄せられるリベラル左翼からの批判は数知れない。最近では、朴氏の著書に対する批判本まで出版するほどの熱の入れようだ。

「左」や「右」という立場に依らず、新しい視点で問題を考えようとする朴氏の姿勢は、真摯なものとして十分に評価できるだろう。もちろん批判を加えるのは自由だが、引用や取材の甘さを持ち出して糾弾するのは、あまりにオタクな対応でしかない。自ら考えることはせず、最初から「糾弾する」という答えだけが用意されている。

 その「憎悪」はとどまるところを知らない。元慰安婦の女性を前面に出し、朴氏を名誉毀損で韓国の裁判所に提訴した。主導したのは韓国の元慰安婦「支援団体」だが、日本の「支援団体」と密接に結びついている。提訴に名を連ねた元慰安婦を日本に呼んで集会を催すなど、韓国側での動きをバックアップしており、日韓の「正義オタク」は一体化している。

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