官民一体の街づくりに成功しているモデルとして、アメリカのポートランドが挙げられるという。
「ポートランドは、行政と民間が協力して街づくりを進め、アメリカでも有数の住みたい街になりました。格子状のストリートネットワークを生かし、衰退した地区を歴史的建物を残しながら再生するなど、アメリカには珍しいコンパクトな街づくりが成功しています。日本も人口が減ってきて、都市が成長する時代から成熟する時代に入っていますから、ポートランドのように今あるものを大切にしながらコンパクトな都市計画をすることが理想でしょう。
一方でフランスのパリなどは、歴史ある街並みを保存するため、建物の改築の規制がとても厳しいですね。ですが、保存にもコストがかかりますし、古いままの建物に住むには当然不便を感じることもあります。日本でも伝統的建築物に指定された建物の所有者が建て替えできずに困っているという声を聞いたりします。やはり、街づくりが成功するのは“規制”ではなく、住民と行政、事業者の“連携”。これからの課題でしょう」(佐々木さん)
ただ、東日本大震災をきっかけに、作り手側の意識が、住民に寄り添うようになってきたようだ。
「住んでいる人をないがしろにして街づくりはできません。原宿というとつい、訪れる人の街と考えがちですが、そこに住んでいる人もたくさんいます。それらの人たちが、安心して幼稚園に通えたり、ママチャリで買い出しに行けたり、お年寄りがゆったり過ごせる空間も必要だと思います」(佐々木さん)
木造駅舎を移築した前例もある。JR中央線の国立(くにたち)駅は、2006年に惜しまれつつ一旦解体した木造駅舎を、市の有形文化財として復元することが正式決定した。駅舎としての機能は終えたが、2020年からは、観光協会の建物として使うことになるという。
※女性セブン2016年7月14日号