こうした与野党それぞれに渦巻く2/3への警戒感を横目に、安倍は選挙戦を通じて憲法改正を前面には出さなかった。先月22日に行なわれたテレビ朝日での党首討論では、野党側が憲法改正を争点にしない安倍を批判したのに対して、こう応じた。
「憲法改正しますって言ったって、それはあまりにもアバウトじゃないですか。(自民党の考え方は)マニフェストの中に書いてあります」
暖簾に腕押しで批判をかわした対応は、逆に言えば、憲法改正を前面に出さないという安倍の強い意思表示だったといえる。初当選以来一貫して憲法改正の必要性を訴えてきた安倍はなぜ、今回の参院選では憲法改正の議論を封印したのだろうか。
そこには、憲法改正が現実味を帯びるに連れて安倍の前に立ちはだかる、「保守層の不一致」と「国民投票」という二つの壁があった。
(文中敬称略。第3回に続く)
【プロフィール】やまぐち・のりゆき/1966年生まれ。フリージャーナリスト・アメリカシンクタンク客員研究員。慶應義塾大学卒業後、TBS入社。以来25年間報道局に。2000年から政治部。2013年からワシントン支局長。2016年5月TBSを退職。著書に『総理』(幻冬舎刊)。
※週刊ポスト2016年7月22・29日号