おふくろが狸ババアだし、俺が育った下町では「おいジジイ! ババア!」は常套句。その延長線で、ラジオでも「ジジイ、ババア」と言うようになったんだよな。俺にとっちゃあ、自然な流れだよね。
おふくろとしても女房としても落第点だけど、いつでも人様のために生きていた。そのいいところを咀嚼して継いでやろうと思っている。
よく、「人の幸せには限りがある」と言っていたね。俺が幸せな時は誰かが不幸せで、俺が不幸せな時には誰かを幸せにしていると思いなさい、って。どこで読んだんだか知らないけど、生意気なババアだよ(笑い)。「余計なことを言いやがって」と思ったけど、親は大学で教えないようなことも言うもんだなってね。
今考えると、おふくろが言ったことは随分俺の筋肉になっていると思う。美輪さんの言う通り、やっぱりおふくろが俺の背中に乗りかかっているよね。
●どくまむし・さんだゆう/東京都生まれ。1948年、12歳で舞台デビュー。1969年よりTBSラジオ『ミュージックプレゼント』パーソナリティを務め、47年目に突入。『シルバー川柳特別編 ババァ川柳 女の花道編』(河出書房新社)など著書多数。
※週刊ポスト2016年7月22・29日号