ビジネス

近畿大学が世に放つ「ウナギ味のナマズ」はキワモノではない

ナマズは海外ではポピュラーな食べ物

 受験者数3年連続日本一、今、最も勢いのあるのが近畿大学である。マグロで名を上げた同大がこの夏、新たな勝負に出る。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がレポートする。

 * * *
 クロマグロの完全養殖に成功し「近大マグロ」を大ヒットさせた近畿大学がこの夏、満を持して世に放つのが、「ウナギ味の近大発ナマズ」。絶滅が心配され価格も急騰中のニホンウナギに替わる、「夢の蒲焼き」の提案だ。

「脂の乗りをさらに良くして、国産のウナギと遜色のないレベルまで引き上げました」と、独自のエサや育成技術を開発した近大世界経済研究所の有路昌彦教授は言う。

「味」だけではない。「世界初」のチャレンジに踏み出した。

 スーパーなどの量販店で「近大発ナマズの蒲焼」の販売がスタートする。大手スーパー・イオンでは7月23日から順次、一部店舗で計7000食ほどの近大発ナマズの蒲焼きを提供するという。他のスーパーや百貨店を含めて、1万数千匹を出荷する計画だ(4~8月)。

 ナマズ。その響きを耳にしてすぐ思い浮かぶことは?

「泥臭さそう」「ぬるっとしてる」「食べられるの?」

 だが、意外なことに、「海外ではウナギよりもナマズのほうが、ずっとポピュラーな食べ物なんです」と有路教授は言う。

「養殖魚の中で世界で3番目に消費されているんですよ。フライやソテーにも適していて、アメリカ、アジア、アフリカでは日常的な食材。食べないのは日本くらいですね」

 たしかに、日本の今の食卓から遠いところにあるナマズ。しかし実は、貴重なタンパク源として日本人に重宝されてきたことをご存じだろうか? 日常的に食べられてきた時間の方が長かったということを?

 古いところでは縄文時代。滋賀県大津市の粟津貝塚湖底遺跡からナマズの骨が見つかっている。どうやらこの時代にはすでに食材の一つで、平安時代には「煮て食べた」という記録も『今昔物語集』の中にあるという。室町時代には贈答品にも使われた。

 西の地域から始まり、江戸時代には関東でも食されるように。汁の具やかまぼこ、蒲焼き、煮魚と、さまざまな料理に活用されていく。田んぼの水路や小川、沼に生息するナマズは、人々にとって身近だったのだ。そして江戸の中頃、ある転換点が訪れる。

「土用の丑の日にはウナギを食べるとよい」と、宣伝を仕掛ける男が登場した。今のようにウナギの蒲焼きがメジャーになった背景には、平賀源内による上手な広告戦略があった、という説が有力だ。

 夏場にウナギが売れないことについて相談された源内は、「本日、土用丑の日」と張り紙をして宣伝した。それがきっかけとなってウナギの蒲焼き人気に火がつき、以後はご存じのように定番化していく。

 つまり、優秀なマーケッターである平賀源内によって、ウナギのブランド化が成功した、というのだ。

関連キーワード

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン