国内

Nスペで反響の介護殺人 介護開始早期に殺人に至る理由

Nスペで大反響(同公式HPより)

「私もいつ殺人者になるか。恐ろしい日々を送っています」(両親を介護している60代女性)

「父に死んでほしいと願っています。こんな私はひどい人間でしょうか」(父親を介護している50代女性)

 7月3日に放送されたNHKスペシャル『私は家族を殺した“介護殺人”当事者たちの告白』が大きな反響を呼んでいる。

 番組では介護殺人を犯して刑務所に服役したり、執行猶予中だったりする“加害者”がNHKのインタビューに応じ、“追い詰められて、殺すしかなかった”と声を震わせ次々と告白した。

 当初、番組サイドは、意に反して、殺人の肯定と受け取られないかと懸念していたが、放送終了後に届いた200通を超える視聴者からの声は冒頭のような「共感」が多かっったという。ほとんどが実際に介護を担っている女性からで、「他人事とは思えない」と切実な思いを語っていた。

 現在、介護の必要性は増す一方だ。日本人の平均寿命は男性80・50才、女性86・83才(2014年)と世界一だが、「介護の必要などがなく生活できる期間」を表す健康寿命になると、男性71.19才、女性74.21才とグンと短くなる。差し引きすると、日本人は亡くなるまでの10年前後を要介護状態で過ごすことを意味する。

 介護を担う人は550万人を超え、その7割が女性だ。「10年介護」…想像しただけで暗澹たる気持ちになる、その長い期間を走り抜けるために、大切な人をその手で殺めないですむために、私たちは何を知るべきだろうか。

◆介護殺人と介護離職が最も多く、最もつらい

 いつ終わるかわからない介護に疲れ果て、長期間の心労の末に犯行に及ぶ。介護殺人はそうみなされがちだが、実態は違った。

「この結果には私たちも驚きました」

 そう語るのは、先のNHKスペシャルのディレクターである丸岡裕幸さんだ。丸岡さんは全国のNHK記者50人以上とともに、2010年以降に発生した介護を理由にした殺人事件(未遂などを含む)を徹底的に取材した。

 その結果、意外な事実が浮かび上がった。この6年間に発生した138件の事件を追跡すると、介護を始めてから「3年以内」に介護殺人に至るケースが半数を超え、なかでも「1年以内」というケースが4分の1に達したのだ。

 なぜ、介護開始から比較的短い期間で殺人にまで至るのか。丸岡さんは介護初期の「三重苦」を理由に挙げる。

「介護経験がなく不慣れな人が多く、どうしても最初の負担が大きくなります。しかも、赤ちゃんの育児は“できること”が増えて楽しいですが、介護は“できないこと”が増えて気が滅入る。さらに介護初期は相手が元気だった頃に近く、“一生懸命リハビリすればきっと回復する”と思い込みがちで、状態が戻らないと絶望感が強くなります。

関連キーワード

トピックス

《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン