メディアの右往左往の一方で、宮内庁と官邸の間の「肚の探り合い」も繰り広げられた。
「様々な報道があることは承知しているが、事柄の性格上、コメントは差し控えたい」
安倍晋三・首相は黙して語らず、菅義偉・官房長官も「コメントは控えたい」と繰り返した。
しかし静観は表向きで、水面下では「陛下は何を語られるのか」は内閣改造の真っただ中でも官邸の重大関心事となっていた。官邸関係者は興味深い言い方をした。
「官邸の事務方トップである杉田和博・官房副長官と風岡宮内庁長官の間で、互いにマイナスとなり得る要素を和らげるなど、水面下のすりあわせが行なわれたようだ」
元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司氏が付け加える。
「憲法では〈天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ〉と定められています。実際には国事行為に限らず、天皇に関しては内閣が全面的に責任を負うものと考えられている。そのため内閣は事前に文言を確認すべきと考えるでしょう」
一般的に会見は本人の考えをストレートに伝える場だが、天皇会見においては必ずしもそうはならないということである。
撮影■日本雑誌協会代表取材
※週刊ポスト2016年8月19・26日号