高校球児は、強豪校ほど清く、正しく、美しいだけでは続かない。野球特待生の人数制限は有名無実となっており、禁じられている野球ブローカーによる斡旋入学も横行している。ブローカーたちの多くは有名高校から“コーチ”など非常勤の肩書を与えられ、報酬は月給制もあれば、選手1人を入部させるごとに35~50万円という歩合制もある。
札束が流れるのは「学校→選手」ばかりではない。むしろ逆パターンのほうが多いという。強豪校がカネを出してまで欲しがる選手は一握り。その一方で我が子の甲子園出場の夢を叶えさせてやるために、カネに糸目をつけない親たちがいる。近年盛んなのは、強豪校とパイプを持つ少年野球指導者の元に子供を預けることだ。
少年野球の世界では「私は名門高校の野球部に◯人入部させた」をウリ文句に選手を集める指導者は少なくない。1人あたり月3万円の指導料で50人以上の子供を教え、首都圏に200平米の豪邸を建てた指導者もいるという。
そうした熱心な親には、高校側も配慮が必要となる。
「ある東北の高校では、親に地元での仕事を斡旋し、さらに弟妹も系列中学に特待生として入学させるという条件付きで、家族全員を移住させた」(スポーツ紙記者)
ただし、甲子園を狙える高校に入学させるということは、金銭的な負担が一般生徒よりもはるかに大きくなることを意味する。
スポーツジャーナリストの手束仁氏は、首都圏と東海地区の高校を中心に野球部の金銭事情に関するアンケートを実施。回答のあった185校の平均を算出したところ、部員1人あたりにかかる1年間の親の負担額は、「部費・2万8925円」、「父母会費・2万7811円」、「用具代・4万6235円」など計23万2082円だった。寮のある高校では、寮費や食費としてさらに5万円ほどが加わる。
「これは強豪校と一般校を区別せずに集計した平均です。強豪校であれば遠征の回数も多いので、年間の平均額は30万円ほどになる」(手束氏)