では、「痛い死に方」と、「穏やかな死に方」を分ける要因は何なのか。医学博士の中原英臣氏は、生活習慣や食生活を挙げる。

「くも膜下出血や心筋梗塞、大動脈解離は、高血圧や肥満などによって、血管に過度の負担が掛かることで発症します。高カロリーな食事を摂り続ける人は、生活習慣病になりやすく特に注意が必要です。

 痛い死に方をしたくなければ、日常生活にウォーキングなど15~30分程度の有酸素運動を取り入れ、塩分や脂っこいものは控える食生活に改めることが肝要です。未病を心掛ければ、必然的に安らかな死を迎えることができるでしょう」

 逆説的に言えば、苦しまないで死ぬためには、健康に生き続けなければならないということだ。

 実は近年、この老衰死で逝く人が増えているという。老衰死による死者数は、1938年の9万8450人をピークに減り続けていた。しかし、2000年に2万1213人で底を打ち、その後、大幅に増加している。2014年には7万5000人を超え、戦後最高を記録した(厚労省・人口動態調査より)。前出の中原氏はこう分析する。

「高齢者の絶対数が増え、老衰による死亡者数を押し上げたと言えます。さらに昨今は、延命治療を断わり、自然な形での死を求める人も、少しずつですが増えてきています。日本人の死に方に対する考えの変化が、老衰死の増加に表われているのかもしれません」

※週刊ポスト2016年8月19・26日号

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