自衛隊員は「覚悟」しているから問題ない、という意見もある。確かに、自衛隊法は「服務の宣誓」として、隊員となった者は《次の宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなければならない》と定めている。

《宣誓 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います》

 事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め――。一般的にはあまり知られていないが、自衛隊員は全員、入隊の際にそう誓いを立てているのだ。そんなのは形式上の話でしょ、ではなく、自衛隊員の多くは本気なのだそうだ。

 私が編集役を務めた『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』の著者・伊藤祐靖に、「死を厭わない伊藤さんは例外で、もっとふつうの自衛隊員はそんなことないんでしょ?」と何度も問うたら、彼はこんな文章を書いて寄越した。本の中から引用する。

《誰も積極的に愛国心だの何だのと口にするわけではないし、国防に関し明確で強い意志を持っているわけではない。しかし、心の奥底には、「社会の役に立ちたい」「個人の利より公を重んじる生き方をしたい」という憧れに近い想いを持っている》

 実際に現役の自衛隊たちにも尋ねてみた。伊藤祐靖が言うように、彼らは「愛国心」などといった大きな言葉を口にしない。でも、真面目な話を振られた彼らはやっぱり真面目で、社会のため、公のため、国民のために尽くせるものならそうしたいかと問うと、小さく、しかし私の目を正視して頷く。なるほど、こういうまっすぐな青年たちだから、大震災の災害派遣活動であれだけ見事な働きができるのかと、納得させられる。

 とはいえ、だ。南スーダンにPKO派遣される自衛隊員たちは、いったい何のために尽くすのだろう。現地の邦人を助けるためなら理解しやすいのだが、そうじゃない。いったんあちらに行ったら、自衛隊も他国軍と同じ国連の戦力として機能するのだ。自衛隊員たちも、昨日まで別に「仲間」でもなんでもなかった他国軍やNGOの連中を、命がけで助けなければならない。

 11月派遣予定の部隊は、今年の5~6月にモンゴルの国際訓練に出向き、「駆けつけ警護」などの新任務に近い内容の訓練を視察したとのことだ。だが、何のために戦うかについては、腑に落ちる説明を受けただろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン