このディスプレイは通常、医師全員が装着し、共通の方向感覚で画像を共有する。医療用ウエアラブルディスプレイと内視鏡を組み合わせているため、手術ロボットに比べると費用は格段に安い。手術器具についても、ダビンチ手術の場合、約40万円もする器具が1回で使い捨てだが、ロボサージャン手術は最小限の使い捨て器具を使用し、低コストを実現している。
「安全性の点からも、気腹をしないことは大きなメリットです。腹腔鏡手術は気腹してできた広い腹腔に、いくつもの孔から器具を入れ、次に腹膜を大きく切開して、腹膜の後ろに到達します。これはダビンチ手術でも同じです」(木原名誉教授)
ガスレスにより、CO2のリスクである肺塞栓、高炭酸ガス血症や加圧による血圧変動、静脈血栓、腹膜損傷による腸閉塞も回避できる。もちろん高齢者の呼吸器や循環器への負荷も軽減可能だ。
ロボサージャン・ガスレス・シングルポート手術は、すでに泌尿器分野で広く使われている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年8月19・26日号