ところが六代目側は静観の構えで、あくまで「破門者」という扱いを崩していない。警察筋も他府県の刑事は「暴力団は状で判断する。状の上では現役ということ」と判断しているのに、宮崎県警は破門者という見解を変えていない。
「被害者は東北で復興事業をしていたと聞いている。福島県では除染作業も手がけていたらしい。一度復縁はしたが、その後再び除籍になっており、その通知を出していない状態と見なしたのではないか」(警察関係者)
ここまで話が複雑になると、事実は当事者しか分からない。これが現代の暴力団抗争の特徴だ。関係者が殺害されれば、その報復を大義名分として掲げ、対立抗争に発展させるのが暴力団の古典的な手口である。しかし、今は無闇に動くと、無関係の上層部まで警察の捜査が及ぶ。
「昔のようなドンパチはできっこない。こうなると山口組のような大看板のメリットもほとんどない。山一抗争の時、今回のような事件が起きれば、六代目山口組側から大量の組員が押し寄せ、一触即発となったろう。でも今は山口組というだけで警察に目を付けられ、かえってやりにくい」(他団体幹部)
派手に動けば特定抗争指定となる危惧もある。警察はそのチャンスを虎視眈々と窺っている。どの組織も仲間を巻き込むきっかけにはなりたくない。山口組の分裂抗争は大きく爆ぜることなく、このままぶすぶすと燻り続けるのかもしれない。
●取材・文/鈴木智彦(フリーライター)
※週刊ポスト2016年9月9日号