患者が余命宣告などに翻弄された末に、自ら死期を早めたり、闘病以上の不幸を抱え込む──。こういった事態を回避するにはどうすればいいのか。2009年、成人T細胞白血病(ATL)を発症し、「余命11か月」の宣告を受けた元宮城県知事の浅野史郎氏が言う。
「私の場合は、生存期間中央値の残り50%(11か月以上生存)の数字を楽観的に捉え、病気を治すことだけを考えました。だから“死んだらどうしよう”や“娘の結婚式に出たい”といった余計なことは考えなかった。そうすると自然と精神が落ち着き、冷静で正しい選択をすることができる」
実は浅野氏は今年8月に前立腺がんの全摘手術を行なったばかりだ。検査でがんが確認されたのは5月だが、月1回のATLの血液検査で、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの値が数か月前から上昇していたという。
「前立腺がんとわかった時、医師からこう告げられたのです。“かなり早期の段階で発見できたので、がん細胞はまだ4つしかありません。進行も遅く、このまま何もしなくても50%は天寿を全うします”と。
この時、私は7年前とは反対の考えをしました。つまり“残り50%は天寿を全うできず、がんで死ぬ”と考え、手術を受けることを決断しました。結果的に再発の可能性もなくがんは根治した。余命宣告されても、新たながんが見つかっても冷静でいられれば、正しい選択ができるのです」(浅野氏)
※週刊ポスト2016年9月9日号