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落合務シェフ 乗り換えた車は51台、腕時計は300本超

落合務氏のスウォッチ・コレクションの一部

「日本一予約の取りにくいレストラン」として知られる東京・銀座のイタリア料理店『ラ・ベットラ・ダ・オチアイ』。オーナーシェフ・落合務氏(68)は多忙を極めながら、料理のことばかりの仕事人間ではない。

 料理や味へのこだわり同様、何事も突きつめるのが若い頃からの性分だった。なかでも「車好き」はつとに有名。免許を取って約50年、乗り換えた車は51台にのぼり、自動車雑誌や「車自慢特集」のテレビ番組から取材される。

「19歳の時に初めて買ったのが、ホンダのN360。当時働いていたホテルニューオータニの給料が1万8000円でしたが、その車は中古で19万円。ほとんど月賦で、ガソリン代や税金もあってカツカツの生活でした(笑い)」

 その後、ベレット1600GTやコロナ2000GTなど、長年乗り続ける車もあれば、3か月で手放す車もあった。現在はシトロエン2CVとアウディA3。シトロエン2CVは31年前の製造で、日本料理店『ざくろ』グループの桂洋二郎オーナーにプレゼントされた思い出の車である。

 こだわりは車だけではない。腕時計──それも何百万円もする高級時計ではなく、カジュアルな時計の代表格・スウォッチに魅せられた。発売開始の約30年前から集め始め、その数は300本を優に超えるが、正確には数えたことがないという。

「お客さんがプレゼントしてくれるので大変な数なんです。色使いがオシャレでデザインがカワイイでしょ。毎日替えると楽しいから、海外に行くとシンプルでポップなものを必ず買います。もちろん日本でも、アウトレットに行って“大人買い”してます(笑い)」

 日々楽しいことを考えるのが最大のストレス解消だと語る落合氏にとって、最近までの懸念は健康だった。肥満が原因で、健康診断では毎回「再検査」。

「人一倍食べるんです。仕事柄、食事に誘われることが多いのですが、どこでも呆れられるほどよく食べる(笑い)。しかも、チョコレートやスナック菓子も食べる。でも去年、一念発起して5か月で9キロダイエットしたんです。その結果、健康診断はすべてパス。医者が驚いていました(笑い)」

 やる気も体も絶好調。夢は「生涯現役」ということか。

「いえいえ、それは私が決めることじゃありません。人に頼られ、必要とされるうちは精一杯頑張るだけ。それが私の生き甲斐であり、人生の原動力なのです」

◆おちあい・つとむ:1947年、東京都出身。高校中退後、日本橋のレストランなどでの修業を経て1966年にホテルニューオータニに入社。1971年、
『ざくろ』グループに移り、1976年に渡仏。イタリアで約2年修業の後、1982年『グラナータ』のシェフに就任。1997年、『ラ・ベットラ・ダ・オ
チアイ』を開店。現在、日本イタリア料理協会会長。

■撮影/江森康之 ■取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2016年9月9日号

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