GAO:あの歌詞を書いたころは失恋をしたことがなかったんです。恋愛的な失恋にはなっていますけど、そのほかに大切な人との別れとか、身内の別れがあって、そういうものに喪失感とか切ない思いを感じていたんです。そこからもう一歩前に、生きている人間は進んでいかなきゃいけないという思いを込めて書いた曲です。
――経験を経て、歌い方は変わった?
GAO:変わりましたね。1990年代に作った曲は自分の経験というよりも、想像や人の話、本を読んで作るものが多かったんです。こうして年齢を重ねてきて、いろんな経験をすると、リアルに感じてくる部分はあります。自分の書いた詩で、今まで響いたことがない言葉に、泣きそうになることもあります。
たとえば、『LOVE』という曲があるんですけど、母にプレゼントした曲なんです。結婚がテーマになっていますが、運命的な出会いなどを歌っています。母は数年前に亡くなったのですが、その曲を歌うと、思い出がよみがえってきます。
その曲に、「誕生日にいつかくれたギターで やっとふさわしい歌を届けよう」という歌詞があります。私が歌手になりたいと言った時、一番の応援者は母でした。母は「いいギターで弾いた方がうまくなるから」と言って、中学生の私に高いギターを買ってくれました。やっとふさわしい曲でお返しができるという、母への気持ちを込めた歌なんです。
【GAO(がお)】
9月14日生まれ。山口県出身。1990年、NHK『全日本勝ち抜きロック選手権 BSヤングバトル』にバンド・GAOとして出場し優勝。翌年、ソロシンガーとしてメジャーデビュー。1992年4月、セカンドシングル『サヨナラ』が累計123.6万枚のミリオンセラーに。1996年3月GAOの活動を休止、2000年よりギャングスタラッパー・REAL Gと名前を変えて活動。2008年、GAOとしての活動を再開。2016年09月25日、池袋・アブソルートブルーにて『ギター・ツイッター・ライブ』開催。
撮影■黒石あみ