国際情報

橋爪大三郎氏がフリーメイソンのパワーの秘密を語る

社会学者・橋爪大三郎氏

 社会学者・橋爪大三郎氏は、かねてよりフリーメイソンに関心を抱いてきた。氏いわく「アメリカ独立の経緯は彼ら抜きに語れず、日本の占領政策にも深く絡んでいるから」。橋爪氏が同団体の謎を読み解く。

 * * *
 彼らのルーツは石工組合、いわばゼネコンの同業者組合です。でも、石工(いしく)という性格もあって、通常の同業者組合を越える存在となっていった。

 同業者組合はふつう、都市を基盤とし、自分たちの利益を守り、おのずと排他的になります。既得権を守るため、権力と結ぶことが多い。ハンザ同盟(*注)のように、都市をまたがる広域の同盟に発展する場合もあります。でも同業者組合にとどまっている限り、社会を変革するパワーは持てません。

【*注13世紀~16世紀に機能したドイツ商業圏。ハンザは「商人仲間」を意味する。商人組合が次第に都市間の同盟に発展し、最終的に共同利益の保全のための軍事同盟的な色彩も帯びた】
 
 では、フリーメイソンはなぜ、そのパワーを持つことができたのか。

 まず、権力と結びつかなかった。石工組合は教会建築も造るが、要塞なども造る。軍事施設です。軍事機密に触れるので、施工主はよそで漏らすなと厳命する。そのいっぽうで、よその機密を探ろうともする。それを拒むところに「秘密主義」の原型があります。複数の施工主(あちこちの国王やいろいろな宗派の教会)と仕事をするので、そのいずれとも距離を置かなければならない。巨額の金銭が動くため、支払いを巡るトラブルも起きる。

 次に、国際組織なのはなぜか。高度な技術者が不足していて、石工はヨーロッパ中を移動した。プロテスタントの信者になった石工たちは、国際組織であるカトリック教会に対抗できる、国際組織の後ろ楯を必要とした。プロテスタントの宗派は細かく分かれて対立し、地域にも偏りがあるので、頼りにならない。

 そこでこの際、同業者組合そのものを、カトリック教会に対抗できる、国際的な秘密結社に強化して、自分たちを守ろうとしたのです。

 フリーメイソンはハイテクの理工系集団で、最先端の技術知識を集めた、当時の大学のようなもの。啓蒙思想系の文化人や業界人も会員に加わり、情報交換の場、新思想の揺り籠として有効に機能しました。

※SAPIO2016年10月号

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト