いま国内の自動車市場は、実用性を重視したミニバンや価格も手ごろになったエコカー、軽自動車などが販売の主戦場となっているが、小規模ながら究極の走りを追求した高級スポーツカーも好調な売れ行きを見せている。
日産自動車ではスポーツカーの象徴「GT-R」を2007年のデビュー以来9年ぶりに大幅改良。今年7月下旬に新モデルを発売したところ、車両本体価格996万円~と高価格帯ながら、わずか1か月で年間の販売計画800台を超える受注を獲得した。
また、ホンダからは1990年に発売し、バブル絶頂期に人気を博したスーパーカー「NSX」の2代目が四半世紀の時を経て登場。なんとGT-Rの倍以上する2370万円~と目が飛び出るほどの価格にもかかわらず、受注開始の8月25日から2週間足らずで年間販売計画の100台を突破した模様だ。
だが、売れているといっても年に百台単位でしか販売台数が見込めないプレミアム市場で、十分な収益が見込めるのかは疑問だ。ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「昨年1年間、日本で2000万円以上のクルマは400台ほどしか売れておらず、ホンダの役員自ら『新型NSXは限られた富裕層しか手が出せないだろう』と、いわば採算度外視の意気込みで発売したと話しています。車体価格だけでなくメンテナンスなど購入後の維持費もかかりますからね」
2代目NSXは開発拠点・生産ともに米国ホンダ(オハイオ州)で行っているため、海外市場を狙ったクルマともいえるが、だからといって日本市場を見切っているわけではない。近年、じわじわと国内のスポーツカー人気が再燃しているからだ。
トヨタ自動車「86」、スバル「WRX」、マツダ「ロードスター」など小型を中心としたスポーツカーが次々と投入されて話題を集め、ホンダも軽スポーツカー「S660」でユーザーの手応えを掴んできた。