この地域を通る阪急神戸線の車両はセレブの象徴だ。栗色の車両は「阪急マルーン」という名で親しまれ、車内は木目調の落ち着いた雰囲気でレトロな高級感を漂わせる。
「山手エリアに住んでいることをアピールするために、最寄り駅を聞かれると、必ず『阪急』とつけて、『阪急六甲』『阪急御影』と答えるのが鼻につく。また最寄り駅を言っても『阪急の上? 下?』と聞くほど選民意識満々で頭にくる」(神戸市長田区・56歳男性)
大阪~神戸間は山手エリアを阪急が通り、やや離れた場所をJRが、沿岸部を阪神ファンでごった返す阪神本線が、3路線平行に走っている。『神戸ルール』の著者でライターの大沢玲子氏はこう話す。
「高級住宅街を通る山手から海沿いに向かうほど車窓の風景は庶民的になっていく。そのため、3つの鉄道会社の線路は、『オシャレ&セレブの等高線』とも称されます」
セレブ意識が強い一方で、山手エリアには意外な一面もある。
「六甲山に生息するイノシシがたまに出没することがある。ベンツの前をイノシシが横切るのは神戸くらい」(東灘区・45歳男性)
神戸といえば灘に代表される酒どころとして有名だ。六甲山系の水を使う日本酒酒蔵が多く、水がきれいなことも神戸市民は自慢してくる。
「せやけど、神戸の水道水の8割は“近畿の水瓶”といわれる滋賀の琵琶湖と大阪・京都の淀川から引っ張ってきとる。素直に大阪、京都、滋賀に感謝しいや」(大阪府・52歳男性)
指摘を受けても、神戸市民はそしらぬ顔。これもプライドの高さゆえか。
※週刊ポスト2016年11月4日号