厚労省が法規制を急ぐ背景には、2020年の東京五輪開催までに「日本の姿勢」を示したいという思惑がある。近年の五輪開催国では罰則付きの“禁煙法”を制定しているケースが多いため、日本だけ受動喫煙防止対策が遅れていると面子が立たないからだ。
だが、「東京都飲食業生活衛生同業組合」の常務理事、宇津野知之氏はこう訴える。
「日本だけ受動喫煙対策が遅れているといいますが、海外では屋内禁煙にするかわりに屋外に喫煙所や灰皿が多数設置され、自由にたばこが吸える国が多い。一方、日本は屋内だけでなく、屋外の禁煙指定区域も広がっています。
海外の真似をして罰則付きの法規制をしさえすればいいというのではなく、日本特有の喫煙環境を後押しする対策がなぜ取れないのでしょうか。
健康増進もいいですが、飲食店でリラックスしながらお酒やたばこを楽しむのもひとつの文化。喫煙が認められている以上、精神衛生の観点からもたばこ対策を論じなければ不公平だと思います」
こうした現場の叫びも届かない法規制がなされれば、それこそ日本人らしい地道な努力やおもてなしの精神も失われてしまうはずだ。