これから物語の時代背景は、1950年代の「もはや戦後ではない」、池田勇人内閣の所得倍増計画、そして高度経済成長へ。「高級子供服」という「窓」から、時代の変化と主人公たちの成長ぶりがどう見えてくるのか、どんな景色が広がるのか。興味津々です。
●その3 役者を演出する力
一部には「ナレーションの関西弁に違和感」という意見も聞かれます。たしかに菅野美穂さんのナレーション、根っからの関西人にとっては違和感あるのかもしれません。江戸っ子の私にとっては、ネイティブの関西弁にはたしかに聞こえないけれど耳をふさぎたくなるほど酷いということもない。ゆったりとしたテンポで物語の邪魔をせず、進行をちゃんとサポートしています。
もし、方言の完璧さを求めるのなら、他にいくらでもネイティブの俳優がいたはず。関西出身「ではない」菅野さんを、敢えてナレーションに採用したのだから、演出側のねらいがきっとあるはず。
彼女の持つ「ゆったり」としたやさしさ、おっとりした雰囲気、母になった菅野さんの柔らかさ、といった要素が、その声から染み出してきているように感じます。このドラマは「役者の個性をどう使うか」という配役と演出が巧み。
靴職人役の市村正親さんから、お笑いのネプチューン・名倉潤さん、ももいろクローバーZの百田夏菜子さんまで、多彩な人材を配置し的確に演出しています。『べっぴんさん』は、そうした「演出力」も見所の1つではないでしょうか。