■セカンドオピニオンがいない人間は硬直化する
新卒でメーカーに入社し、以来、ずっと営業畑を歩んできました。30代のときに、2年間、大阪に転勤もしましたね。自分で言うのもなんですが、順調に出世したと思います。私、身長は170センチあるし、人生ずっとショートヘアで、まあ、いかにもキャリアウーマン然としてる。男性の中にいても、女を意識されないタイプ。働くにはそれがよかったのかもしれません。
でも、おかげで結婚は遠かった(笑)。同期と2人、付き合いましたが、どちらも長くは続かなかったですね。自分では、結婚より仕事をとった、という意識はないんです。私の世代は、バリバリ仕事をしてたって、結婚し子供を産んでる女性は少なくない。私もいつか出会いが……、とぼんやり思っていたのですが、ぼんやり思っている程度ではやってこなかった。もともと猪突猛進タイプで、結局、目の間の仕事に邁進してしまい、毎日は充実、独身で困ることもなかったんです。
ただ、一人の生活が長くなると、ラクな反面、変化に乏しくなります。長年の一人暮らしに“飽き”のようなものを感じてきたころ聞いた会話が、胸に刺さりました。ある居酒屋で、うちの会社と思しき30代の若者たちが、私と同年代の女性上司の愚痴を言ってるのをたまたま聞いてしまったんです。確かこんな感じ。
「あの人、5年前まではデキる人だったのに、どんどんまわりが見えなくなっている」
「ほんと、あれじゃ、下はついてこないよ」
「セカンドオピニオンがいないからなー」
「え?」
「女だからじゃなんだよ、男だって同じ、セカンドオピニオンがいない人間は硬直化する」
「あー、なるほど。セカンドオピニオンね。旦那じゃなくて彼氏でもいいんだろうけど。俺らも奥さん大事にしなくちゃ」……
セカンドオピニオン! 私にもいない! と。以来、その言葉が頭から離れなくなりました。若い頃は友人や同僚が周囲にたくさんいたし、上司に叱られたりもしました。が、40を過ぎると、部下が増えて、本当のことを言ってくれる人って少なくなります。家族と住んでいれば親から耳の痛いことを言われたりもするのでしょうけど、離れていればそれもない。一人でラクだと思っているうちに、頑固で、変化の乏しい人間になっていくのかもしれない……。突如として、結婚しなくては! と思い立ったのです。