「紅葉に染まる寺を誌面に掲載したくても、いくつもハードルがあって大変なんです。寺社への許可をもらうのも時間がかかりますし、写真1点につき数万円くらい“お布施”とか“志納金”という名目でお金を払う必要があって。もう少し安く済む通信社で写真を買おうにも、欲しい画(写真)とは違うし、予算は上げられないし。毎年この時期は誰かしら倒れてます(苦笑)」(トラベル誌編集者・30代男性)
同書には、「洛外」出身の井上さんが洛中の人たちから無慈悲な“いけず”を受ける様子がこれでもかと描かれている。反響はどうだったのか。
「人口比を比べると圧倒的に洛外出身のかたが多いので、“よくぞ言ってくれた”とお褒めの声をいただきました。正直、洛中のかたからは総スカンを覚悟していましたけれど、“よそからお嫁入りして、本当につらい日々を過ごしていました、ありがとう”と言ってくださる女性のかたもけっこういらっしゃいました。
一方で、“あんなのはどこの街にでもある”との批判もいただきました(苦笑)。それこそ女性セブンさんでやってらした“鎌倉ぎらい”のようにね」(井上さん)
そもそも京都に縁のない人には「洛中」や「洛外」と言われても、ピンと来ないかもしれない。洛とは、中国最古の王朝・殷の時代からたびたび首都となってきた「洛陽」から、都の意へ転じ、日本では平安時代から京都の異称として用いられてきた。そこから、今でも京都中心部を「洛中」と呼び、周辺を「洛外」と呼ぶのだ。
話を戻そう。「洛中」に住む人たちは、日本中のあちこちから上がる“京都ぎらい”をどう見たのか。
「迷惑だなあと思いましたよ。私は京都の中京区寺町(洛中)と右京区の嵯峨(洛外)の両方に家があって、今までは“実家は嵯峨です”と言うと“いいところにお住まいですね”と言われていたのが、あの本が出て以来、“ああ、田舎の”みたいな反応で。あの本以降は、“商売をやっている寺町が本籍で、居住しているのは嵯峨”とか回りくどい説明をしなくてはならず面倒なんです」(43才・女性)
「洛中に住んでいる親戚が、これまで以上に町の子のプライドを強くしてしまって。我こそ京都の中心という感じで、すごく偉そうです…」(京都市左京区在住・48才女性)
※女性セブン2016年12月8日号