ライフ

末期癌医師・僧侶 「クリスマスの故に永遠に生きる」の解釈

医師・僧侶の田中雅博氏

 2014年10月に最も進んだステージのすい臓がんが発見され、余命数か月であることを自覚している医師・僧侶の田中雅博氏による『週刊ポスト』での連載「いのちの苦しみが消える古典のことば」から、クリスマス聖歌の「クリスマスの故に永遠に生きる」の解釈を田中氏が解説する。

 * * *
 キリスト教の総本山ともいえるローマ教皇庁では、世界中から多くの歌手を招いてクリスマスコンサートを開いており、2001年のコンサートはDVDになっています。そのDVDは教皇ヨハネ・パウロ2世がクリスマスキャンドルを灯す場面で始まります。

 会場は座席数が6300もあるバチカン市国のホールです。その翌年2002年には、私はバチカンの医療国際会議に招かれ、このホールの壇上に登ってヨハネ・パウロ2世と握手したのでした。

 音楽会は著名歌手達による『聖しこの夜』で始まり、次がトム・ジョーンズのソロで『マリア様の男の子』です。彼は「イエス・キリストがクリスマスの日に生まれた」と歌っていますが、実は間違いなのです。

 その証拠は、続く歌詞にある「羊飼いが羊の群れを見ている夜」です。羊飼いが野宿をしながら羊の群れを見るのは、昔も今も子羊が生まれる春だけなのです。この歌詞は、イエス誕生の日を示す唯一の史料、新約聖書ルカ伝第2章に依っています。ルカは医者でイエスの弟子、聖人なので漢字では「聖路加」と書きます。

 春に生まれたイエスの誕生祝いを、なぜ冬に行なうのでしょう。それは初期のキリスト教会の戦略だったようです。コンスタンティヌス帝がキリスト教など、ミトラス教以外の宗教に寛容を示した313年ミラノ勅令(全帝国市民の信教の自由を保障したもので、このときにようやくキリスト教が公認された)以前に誕生祭は始まったと考えられます。

 ミトラス教の太陽神が冬至を過ぎて復活する12月25日のお祭りに紛れて、イエスの誕生を祝ったのでした。当時は日没から一日が始まっていたので、現在のクリスマス・イヴは25日だったのです。その後、392年にテオドシウス1世がキリスト教を国教化し、隠れて祝う必要がなくなった後も、イエスの降誕(誕生)祭は12月25日のまま続けられました。

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン