『マリア様の男の子』の歌詞は「クリスマスの日の故に私たちは永遠に生き続ける」と続きます。これはヨハネ伝第3章に依っていると思われます。神はこの世界を非常に愛しているため、ひとり子イエスを与えて、この世を救いました。キリスト教の信仰は「いのちの苦」のケアなのです。

 私達の施設では、キリスト教を見倣って、春に生まれたお釈迦様の誕生祝いをクリスマスの日にも行なっています。誕生仏と赤ちゃんイエスの像、それから誕生鬼にも甘茶をかけます。

 日本人の多くは、本人は気づいていないかも知れませんが、他人の宗教(価値観)を尊重する仏教徒だと思います。そのような文化(生き方)を説いたお釈迦様の誕生を、イエスの誕生と共にお祝いするクリスマスが世界に広まれば、アインシュタインとフロイトの往復書簡の結論(前回参照)のように、戦争のない世界が実現するでしょう。

●たなか・まさひろ/1946年、栃木県益子町の西明寺に生まれる。東京慈恵医科大学卒業後、国立がんセンターで研究所室長・病院内科医として勤務。 1990年に西明寺境内に入院・緩和ケアも行なう普門院診療所を建設、内科医、僧侶として患者と向き合う。2014年10月に最も進んだステージのすい臓 がんが発見され、余命数か月と自覚している。

※週刊ポスト2016年12月16日号

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