ライフ

世界を巻き込み減塩不要の大論争 NYタイムズも取り上げる

世界中を巻き込む大論争に発展

「減塩は体にいい」というのは、あくまで日本の常識。世界に目を転じると「減塩が原因で病気を引き起こしたり、入院や死亡に至るリスクが高まる」といった報告が近年増えている。

 米国では、かねてから減塩の是非を巡って活発に議論が行なわれてきた。それが2013年、世界中を巻き込む大論争に発展した。

 米国は一般人の塩分摂取量として1日あたり5.8グラムを上限値、高血圧患者では3.8グラムを推奨値としている。しかし、米国医学研究所がこの基準値に科学的根拠がないとする見解を発表、「減塩は不要だ」と唱えたのだ。

 その理由は「1日3.8~5.8グラム程度に制限する減塩を行なうと、糖尿病、腎臓病、心臓病の予後を悪くさせる可能性が示されている」などだった。

 これに米国心臓協会が反論。「減塩に効果がない、あるいは死亡を増やす可能性を示した研究の多くは、一般人ではなく健康に問題のある人たちを対象にしたものだ」と主張。“減塩反対派”である米国医学研究所が根拠とする論文は「信頼性が乏しい」とした。

 この論争は長く尾を引き、翌2014年4月22日付のインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙でも大々的に取り上げられるなど、世界的な関心事となった。しかし、いまだ決着はついていない。

 翻って国内を見てみると、「減塩するリスク」について議論することすらタブー視されている現状がある。世界の医学論文に精通する北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師がいう。

「『減塩は健康にいい』という風潮もあり、医師たちはどんな患者にもとりあえず減塩させる傾向にある。糖尿病や腎臓疾患、心臓病などを持つ人は減塩すべきですが、健康な人まで極端に塩分を減らす必要はありません」

 米国の論争を見ればわかるとおり、塩分摂取と健康の関係性において決定的な結論は出ていない。にもかかわらず、「減塩原理主義」をひたすらに患者に押しつけることは、思考停止の誹りを免れないだろう。

※週刊ポスト2016年12月23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン