コラム

カープ優勝でデフレ脱却? バブル景気以来の良い指標が続々

広島カープは「デフレ脱却のシンボル」的存在

 2016年のプロ野球は、“神ってる”強さで25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島カープと、“二刀流”の大谷翔平ブームに沸く日本ハムファイターズが日本シリーズで激突。近年にない盛り上がりを見せた。こうした事象と景気との相関について、「ジンクスの達人」として知られるエコノミストの宅森昭吉氏が解説する。

 * * *
 プロ野球では日本ハムが広島を下し日本シリーズを制したが、この対戦カードは景気拡張を示す組み合わせだ。人気球団が日本シリーズで対戦すると景気が良くなる傾向があるのだが、読売新聞の世論調査によると、今や広島はセ・リーグ3位、日ハムはパ・リーグ2位の人気球団だ。日本シリーズに登場してきた2チームの人気順位を合計した数値が5以内の年は1986年以降17回あったが、そのうち16回は景気拡張局面だった。

 また、この両チームのリーグ優勝は、それぞれに重要な意味がある。パ・リーグの日本ハムは11.5ゲーム差からの逆転優勝を決めたが、10ゲーム差以上をひっくり返すドラマチックな逆転劇は1963 年の西鉄以来、過去に4回の記録がある。リーマン・ショックが起きた2008 年の巨人を除けば、すべて景気は拡張局面だった。

 一方、セ・リーグを制した広島は「デフレ脱却のシンボル」的存在だ。過去に広島がリーグ優勝した6回の暦年の名目GDP成長率の平均値は7.4%で、Aクラス入りした年の平均値でも5.8%と高い成長を示している(全期間平均は3.3%)。1997年のAクラス入りを最後に成績が低迷すると、日本経済も長いデフレ局面に突入している。

 そしてデフレ脱却を目指すアベノミクスが本格スタートした2013年にようやくAクラスに復帰、この年の名目GDP成長率は0.8%となった。広島がAクラスにあるときにはマイナス成長は一度もないのだ。

 ちなみに広島の優勝はバブル景気がピークを打った1991年以来、25年ぶりだ。こうしたバブル景気以来の良い数値を示す経済指標はほかにも複数見られる。9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.38倍となったが、これは25年ぶりの高水準だ。文科省が発表する高卒者の就職内定率は2016 年3月末で97.7%で、こちらは24 年ぶりの良い数値となった。

 さらに、2016年上半期の企業倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は4273件で、上半期としては26年ぶりの低水準を記録している。2017年もデフレ脱却のシンボルである広島が連覇すれば、アベノミクスの先行きに明るい兆しが見えてくるかもしれない。

 とはいえ、今も昔もプロ野球で最も人気のあるチームはやはり巨人だ。消費者マインドに最も好影響を与えるのは、広島よりも巨人の優勝なのだが、2017年は巨人の復活を示唆するデータもある。夏の高校野球で関東勢が優勝した年の翌年は、巨人が71%の確率でリーグ優勝しているのだ。2016年は栃木代表の作新学院が制しており、期待が高まる。

【PROFILE】たくもり・あきよし:さくら証券、さくら投信投資顧問のチーフエコノミストを経て、現在は三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト。ESP景気フォーキャスト調査委員会(日本経済研究センター)委員、景気ウォッチャー調査研究会(内閣府)委員。著書に『ジンクスで読む日本経済』など。

マネーポスト2017年新春号

関連記事

トピックス

決死の議会解散となった田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
「市長派が7人受からないとチェックメイト」決死の議会解散で伊東市長・田久保氏が狙う“生き残りルート” 一部の支援者は”田久保離れ”「『参政党に相談しよう』と言い出す人も」
NEWSポストセブン
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン
羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ騒動が起きていた(写真/アフロ)
【スクープ】羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ告発騒動 “恩人”による公演スタッフへの“強い当たり”が問題に 主催する日テレが調査を実施 
女性セブン
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《初共演で懐いて》坂口健太郎と永野芽郁、ふたりで“グラスを重ねた夜”に…「めい」「けん兄」と呼び合う関係に見られた変化
NEWSポストセブン
千葉県警察本部庁舎(時事通信フォト)
刑務所内で同部屋の受刑者を殺害した無期懲役囚 有罪判決受けた性的暴行事件で練っていた“おぞましい計画”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《「父子相伝がない」の指摘》悠仁さまはいつ「天皇」になる準備を始めるのか…大学でサークル活動を謳歌するなか「皇位継承者としての自覚が強まるかは疑問」の声も
週刊ポスト
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《「めい〜!」と親しげに呼びかけて》坂口健太郎に一般女性との同棲報道も、同時期に永野芽郁との“極秘”イベント参加「親密な関係性があった」
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン
すべり台で水着…ニコニコの板野友(Youtubeより)
【すべり台で水着…ニコニコの板野友美】話題の自宅巨大プールのお値段 取り扱い業者は「あくまでお子さま用なので…」 子どもと過ごす“ともちん”の幸せライフ
NEWSポストセブン