麗澤大学教授・八木秀次氏


小林:もし退位と即位の自由が否定されたら、天皇陛下や皇太子殿下は「なんでこんな立場を無理やり押しつけられるんだ」とモチベーションがゼロになるだろうね。自由意思も人権も否定されてロボット扱いされたら、人間なんだから気持ちが荒むよ。そのほうがよほど皇統を滅ぼすと思う。

 この制度は、国民と天皇の相互信頼でしか成り立たない。わしは、天皇陛下が「もうやらない」とおっしゃるなら、共和制になっても仕方がないと思ってます。だから、不自由な制度であることは承知しながらも、やっていただいていることに感謝してるわけ。

 続けていただくには、天皇陛下や皇太子殿下のモチベーションを損なわないようにしなければいけない。あなたも、もっと天皇陛下を信じるべきだよ。なんでそんなに猜疑心を持って弓を引くの? それじゃ逆賊だよ?

八木:逆賊じゃないですよ。たしかに当事者にとっては不自由な制度ですが、そのことによって制度そのものが安定する設計になっているんです。天皇陛下のお気持ちに沿えないのは心苦しいが、退位を実現すると天皇の存在自体を危うくしてしまう。それによって結果的に陛下を傷つけてしまうことを恐れているんです。

小林:とはいえ、もはや政治的には退位を実現するしかないわけだから。

八木:その理屈が立たないから困ってる。共産党をはじめとする左翼が退位に賛成してますが、彼らは憲法上疑わしい状態になるのを待ってるんです。皇太子殿下が即位した瞬間に手の平を返して「この即位は憲法上、正統性に問題あり!」と騒ぎ出すかもしれない。

小林:そうならないために理屈を考えるのが、あなたの役割でしょう。うまい理屈を立ててあげなさいよ。そうしたら少しは尊敬するから(笑)。

【PROFILE】こばやし・よしのり/1953年生まれ。『おぼっちゃまくん』でギャグ漫画に新風を巻き起こす。現在、本誌にて『大東亜論 自由民権篇』を連載中。今年2月下旬に刊行予定の『天皇論 平成29年』を鋭意執筆中。

【PROFILE】やぎ・ひでつぐ/1962年生まれ。早稲田大学法学部・同大学大学院法学研究科修士課程を経て、同大学大学院政治学研究科博士課程を中退。専門は憲法学。昨年11月、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」で八木氏にヒアリングが行われた。

※構成/岡田仁志(フリーライター)

※SAPIO2017年2月号

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン