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「返し馬」の見方とは? 角居勝彦調教師が解説

 さて、返し馬でいつまでたっても走り出さない馬がいますね。あれは我慢がきいているということかも知れません。さまざまな不安をぐっと内側に蓄めているような。こういう馬は平常心でゲートに入れそうです。

 ヨーロッパの大きなレースでは必ず馬番順に整列して、馬場に出たらゴール板を並足で通過することが義務付けられていますが、日本では順番通りでないこともあります。

 パドックで最後の周回をせず、番号順を無視して先に馬道に向かう馬が時折います。あれは許可を得ての「先出し」です。じっと我慢して周回していた馬が、ジョッキーが跨がった途端に我慢がきかなくなって、きちんと歩けなくなる。走り出したくなる。実際、本馬場へ向かう馬道で走り出す馬もいます。それで、危険性を考慮して真っ先にパドックを出て、最初に返し馬をするわけです。

 逆に、若い番号なのに最後尾を周回する馬もいる。返し馬を最後に下ろしたいという意図です。馬場に出るときに前の馬の影響を受けて引っ掛かることを案じ、ゆっくりとキャンターに下ろしたいわけです。

 本馬場に出れば、レースは馬と騎手のもの。私たちが寄り添えるのはそこまで。感性を研ぎ澄ませて、やれることはすべてやる。勝ち負けはその向こう側にあります。

●すみい・かつひこ:1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位(2016年12月18日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。

※週刊ポスト2017年1月13・20日号

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