国内

「減塩しすぎると認知症になる」説 真偽を専門家が解説

健康によいとされる減塩にリスクの指摘も

 長らく日本では、「減塩=体によい」が当然とされたが、最近になって、次のような衝撃的なタイトルが躍り、大反響を呼んでいる。

《「塩分を減らせば血圧は下がる」は間違いだった》(週刊ポスト2016年11月25日号) 《気をつけろ! 減塩しすぎると認知症になる》(週刊現代2016年12月17日号)

 全国で1010万人が罹患し、国民病といわれる高血圧。放置すれば動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病などさまざまな病気のリスクが高まる。それゆえ高血圧の原因である塩分の摂取を抑制すれば、健康を維持できる――これが従来の「定説」だった。だが一連の記事は、減塩に高血圧対策としての意味がないばかりか、減塩が認知症を招くとまで指摘するのだ。

 週刊現代の記事は、「行きすぎた減塩が動脈硬化につながる」と指摘。動脈硬化の傾向がある人は血管性認知症になりやすいことから、「減塩しすぎると認知症になる」と主張した。 だが、日本高血圧学会・減塩委員会委員長を務める、製鉄記念八幡病院の土橋卓也さんはこう語る。

「行きすぎた減塩が動脈硬化につながるという科学的根拠はありません。動脈硬化の原因は主に高コレステロールや糖尿病、高血圧なので、むしろ塩分を過剰に摂取することが血圧を高くして、動脈硬化を招くと考えるのが妥当です」

 土橋さんによれば、食塩摂取量と認知症の関係を直接調べた研究は存在しない。その一方、世界的に著名な九州大学の疫学調査「久山町研究」により、「高血圧の人は血管性認知症になりやすい」ことが確立したと言う。

「高血圧になると脳卒中など脳の血管障害が発生して、血管性認知症につながります。久山町研究では、軽度の高血圧は正常な血圧と比べて4・5~6倍、重度の高血圧では5・6~10・1倍も血管性認知症の発生頻度が高かった。高血圧を発症する大きな要因は過剰な塩分摂取なので、減塩は血管性認知症の予防になるといえます」(土橋さん)

 塩分の過剰摂取はほかにもさまざまな病気を引き起こす。国立がん研究センター・社会と健康研究センター長の津金昌一郎さんが指摘するのは「胃がんリスク」だ。

「1995年から男女約8万人を6~9年間追跡した私たちの研究で、漬物、干物などの塩蔵食品を多く摂ると胃がんのリスクが高まりました。高塩分の食品によって胃の粘液が傷害され胃酸から胃粘膜が守れなくなると同時に胃がんの元凶であるヘリコバクターピロリ菌が生着・増殖しやすくなる。すると胃粘膜に炎症が起こり胃がんになりやすくなると考えられます。日本人の死因で多い胃がんと脳卒中はいずれも塩分が関係するので減塩は非常に大切です」

 やはり減塩は健康によいとのことだが、無理な減塩はリスクを伴うとの指摘もある。

「高齢で食が細くなったかたが無理な減塩をすると脱水や栄養不足になる恐れがあります。減塩はあくまで健康長寿のためであり、1日6gをめざせば充分です」(土橋さん)

※女性セブン2016年1月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン