米バイオ医薬品大手のセルジーン社が「末梢性T細胞リンパ腫」治療薬として昨年9月に承認申請した「ロミデプシン」も医学界で注目されている。T細胞と呼ばれるリンパ球の一種ががん化するこの病気は症例が少ないこともあり、根治に至る治療法が確立されていない。
そんな中、このロミデプシンにはがん細胞が“自滅”していくアポトーシス(細胞死)という効果が期待されており、優先審査の対象として年内にも販売される可能性があるという。
こうした新薬が普及するうえで高いハードルとなるのが薬価の問題だ。オプジーボは高額がゆえに医療財政を圧迫するとして議論が起こり、厚労省は今年2月から、年間3500万円(体重60キロの患者)かかったオプジーボの薬価を1750万円に半減することを決めた。
キイトルーダの予想価格は、薬価算定の基準が「類似の医薬品に合わせる」(厚労省保険局医療課)ため、オプジーボと同額程度になると予想されている。元東京大学医科学研究所特任教授で、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はこう指摘する。
「オプジーボは半額になっても欧米諸国に比べてまだ倍近い。今後、キイトルーダのような競合薬の登場によって、メーカー間で値下げ競争が始まれば薬価はもっと下がっていくはずです」
ただし、がん新薬については効果と安全性が未知数な部分も多い。キイトルーダも下痢や倦怠感、発熱などの副作用が報告されており、「くれぐれもよく医師と相談した上での服用を心がけてほしい」(前出・上氏)とのこと。
それでも、これまで延命治療のイメージが強かった抗がん剤とこれら新薬とは、明らかに一線を画す。
1月17日には、京都大の本庶佑・名誉教授らの研究チームが、オプジーボと高脂血症の薬「ベザフィブラート」を“併用”することで、がんの治療効果が高まる可能性があるとして、肺がん患者への治験を始めることを発表するなど、可能性はさらに広がりつつある。
手術、抗がん剤、放射線療法に次ぐ「第4の治療法」の選択肢が現実化してきた。
※週刊ポスト2017年2月3日号