「韓国の女性の価値というのはとにかく若いことと美人なこと。だから病院の女性スタッフは若い人ばかりで、結婚したら退職するのが普通です。そのため、資格だけ持った『元看護師』が大量に発生するというわけなんです」

 キム医師が注射器を片手に青瓦台に日参する一方、家族たちも朴槿恵利権にありついていた。

 キム・ヨンジェ医院と同じビルに入っていたコスメブランド『ジョン・ジェイコブス』。韓国人に聞いても、「知らない」「聞いたことがない」と首をかしげるこの無名コスメが、2016年夏頃から『新羅ホテル』や『新世界デパート』の目立つ場所に置かれるようになった。

 その理由は同社の経営を、キム・ヨンジェの親族がしていたからと考えるのは早計ではないはずだ。大々的に売り出されるだけではなく、青瓦台でのおみやげとして大量にばらまかれていたという報道もあったのだから。

 もちろんこの騒動でデパートやホテルからは撤退。ホテルやデパート関係者に聞くと、「理由はわからないけれど撤退しました」と複雑な表情を浮かべた。

 キム・ヨンジェ医院の階下にある直営店には、スタッフが常駐していた。「大統領お墨付きのコスメと伺ってきたのですが」と言うと、「今は売ってないんです」と申し訳なさそうに答える。

 病院ももぬけの殻、疑惑コスメも空振り。これでは取材にならない──そんな私たちの落胆した表情が見てとれたのだろう。「そんなにおっしゃるなら…」と中に入れてくれた。

 内装は白とオレンジを基調としたおしゃれなサロン風のつくり。化粧品販売のほかに、エステなどの施術も行っているようだ。「朴槿恵が青瓦台で配っている」と噂になったセットは222ドルだった。

「これが基礎化粧品も入ったいちばん高級なラインです。男性もお使いになれますし、今買ってくださるなら10%オフにしますよ」

 熱心に進めてくる塩顔イケメンのスタッフは、「朴槿恵はこれを職員に配っていたんですか?」といった、少しぶしつけな質問にも、ニコニコ顔を崩さず、今度は誇らしげな表情を浮かべてこう説明した。

「職員には配っていませんよ。朴大統領が差し上げるのは海外から来たVIPです。例えばエリザベス女王やオバマ大統領なんかに。このお店には韓流スターなど、たくさんのセレブリティーが来ているんですよ」

 しかし「セレブリティーといえば、やっぱり大統領も?」と聞くと「いえ、あのかたは…」と口をつぐんでしまった。

 こういった相手の反応は、取材中何度もあった。この件で何人も暗殺されたり行方不明になったりしているうえ、韓国は「CCTV」という監視カメラがいたるところに付けられており、すべて録画されているというのだから、無理もないのか…。

※女性セブン2017年2月9日号

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