ソウル市民の男性は「整形の注射を打つのはいい。だけどそれを、いつ、どこで打ったかが問題なんだ」と怒りをにじませる。韓国において、女性が美しくあることは学歴や財力と同じくらいの重要度を持つ。だから、大統領の整形そのものはそれほど問題ではない。しかし、公費を使って、しかも大きな事故の渦中に行っていたとしたら大問題であるというのだ。

「いつ、どこで」を解明するため、「特検」は2016年12月28日、江南で整形クリニックを営んでいたキム・ヨンジェ医師(56才)の自宅を家宅捜索した。一介の医師が「空白の7時間」に関係していると睨んでいるのだ。

 彼には、青瓦台に入って朴槿恵の皮膚を診断したり、美容注射を打っていたという疑惑があり、さらに空白の7時間にも、施術を行っていたのではないかと言われている。

 キム・ヨンジェ医師のクリニックはホームページもなく、口づてで広がったお金持ちのセレブたちの自宅に往診していたとの情報をもとに、取材を進めると、江南にある雑居ビルに辿りついた。大統領お抱えの整形医であれば、さぞや派手で大きな病院かと思えば、歯科医院や喫茶店の入ったごくありふれたビルの7階でひっそりと看板をかまえていた。入り口にもラグジュアリーな装いはなく、“キム・ヨンジェクリニック”とそっけなく書かれていただけだった。病院内は電気が消えており、インターフォンを押しても、大声で呼びかけても誰も出ない。

 周辺の住民や同じビルの病院スタッフに聞いても、みんな示し合わせたように「知らなかった」「見たことがない」と表情を曇らせた。江南に実家のある女子大学生は、母親から名前を聞いたことがあると言う。

「オンマたちの間では、呼ぶと美容注射を打ちに来てくれるお医者さんとして評判だったようです。江南に住むマダムたちが何人かで集まって“注射をお願い”と電話すると持ってきて打ってくれるって。糸を注入するフェイスリフティングの注射がメーンで、1本30万円くらいが相場だったようです。本人は、外見も地味だし、物静かなタイプだけれど、お金にはうるさかったとか」

 日本の常識からすれば、美容クリニックの医師を家に呼んで、みんなで仲よく注射を受けることなど考えられない。しかし韓国ではそう珍しい光景ではないという。

「『ヤメ』という注射おばさんがいて、ママ友や親戚たちの間で電話番号が共有されているんです。例えば『ユンケル注射1本』と電話でお願いするとおばさんがスクーターで来てくれて、打ってくれる。1本5000円くらいで、病院に行くより安いし楽だから何回かお願いしたことがあります。そういった注射だけでなく、美容師やエステの『ヤメ』もいますよ」(韓国在住ジャーナリスト)

 注射を打ってくれる「ヤメ」のほとんどは、元看護師。その理由を、産経新聞ソウル駐在特別記者で論説委員の黒田勝弘さんが分析する。

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン