国内

講談は「注釈芸」 町人の知りたい欲を満たすメディアだった

講談は「宝の山」と語る神田松之丞

 張り扇で机を叩き、強弱をつけた小気味よいリズムで歴史物語などを語る。一見、「よくわからない」「内容が堅そう」というイメージを持ちがちの講談が、今人気だ。そのブームの火付け役のひとりは、二ツ目の講談師・神田松之丞(33才)。江戸時代に生まれたこの娯楽の魅力を彼に聞いた。

 講談は、『太平記』などの歴史的な事件や人物を扱った物語を注釈して語る話芸だ。江戸時代は講釈とよばれていた。

「いわゆる注釈芸だとぼくは捉えています。注釈芸ですから、初めて聞く人にも、わかりやすく楽しめる語りを心がけています。例えば、身長197cmもあった雷電爲右エ門という寛政時代(1789~1801)の力士がいます。昔の尺貫法でいうと、6尺5寸という言い方になるんです。でも、その言い方だと、現代人にはわからないですよね。だから、私は、197cmで語るようにしています」(神田松之丞、以下「」内同)

 天保時代(1830~1844)の講釈師の数は、約800人。講談が“娯楽の王様”だった。

「当時、町民の聞きたい、知りたいという欲求を満たすテレビのようなメディアだったと思っています。例えば、ニュース番組の役割もしていたんですね。心中事件があったら、翌日には講釈師がその話を、事件を細かく聞いて板にかけているという」

 現代の講釈師の人数は、わずか10分の1。人気が出てきたといっても、当時とは比べものにならない。講談はもっともっと人気が出る娯楽だと、松之丞は言う。

「この前老人ホームで、90才を超えたかたたちを前に雷電の話をしたんです。この人たちのお相撲の原体験は、ぼくのものと違います。ぼくは若貴とか千代の富士くらいですが、もっと前の世代ですよね。若貴世代のぼくが、寛政時代の雷電の話をすることで、共感して笑っていただけたんです。

 お互いの記憶、日本人に生まれて、相撲と共鳴させるというか、こんなに喜ぶのかという不思議な空間が生まれたんです。

 そういうときに、物語は人々の中に生きているし、おもしろいものだなと思いました。物語が後世に残っているのは、おもしろいから残っているわけです。物語をみんなが共鳴しあって生きていることが、とてもすてきだなと思ったんです。現代人は自分の中に物語をもっと持っていた方がいいと思っています。

 ぼくは、講談は宝の山だとよくいいます。『日本人が大事にしてきた物語を、なぜ今、共有できていないんだろう』という忸怩たる思いがあります。老人ホームの経験で、年配のかたたちは、そういうのをまだ持っているなという喜びがあったし、今の現代人にもそれをつなげていきたい」

※女性セブン2017年2月16日号

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン