ビジネス

高齢タクシー運転手への「もみじマーク」義務化の会社はゼロ

タクシー運転手は人命を預かる立場

 昨今高齢ドライバーによる「アクセルとブレーキの踏み間違え」事故が多数報じられている。そんな中、タクシー業界に70歳超の高齢ドライバーが数多くいる現状を浮き彫りにした本誌・週刊ポストの前号記事(2017年2月10日号)は、業界に衝撃を与えた。

 この高齢ドライバー問題についてタクシー会社側の反応は鈍く、前号では本誌アンケートに対する回答も少なかった。そこで、改めて主要30社に質問項目を広げて再調査を行なった。回答があったのは30社中17社だった。

 まず「70歳以上タクシー運転手は何人いますか?」という質問に対し、全回答企業の合計で70歳以上ドライバーは約430人だった。

 3月12日に施行される改正道路交通法では、75歳以上のドライバーが信号無視などの違反をした場合、「臨時認知機能検査」を実施し、認知機能の低下が認められたら実車講習などの受講が義務づけられた。

 人命を預かるタクシー運転手の場合、より厳しいチェックが必要と考えられるが、タクシー会社は法令に定められた対策以外にどんな対応をしているのだろうか。

「年2回の健康診断で異常があった人や、73歳で再雇用する人には、脳MRI検査を実施」(西武ハイヤー)

「営業所に血圧計を配備するなどの健康管理」(帝都自動車交通)

こうした独自の対応をしている会社もあるが、「特になし」と回答した会社も目立つ。 タクシー運転手も、70歳以上であれば、「もみじマーク(高齢運転者標識)」を表示する努力義務があるが、運転手に表示を義務づけているタクシー会社はゼロだった。

「お客さんの立場からしたら、もみじマークを付けているタクシーには乗りたくないですよね。おそらく他社も同じ考えだと思います」(相模中央交通)

 ならば、もみじマークではなく、年齢や乗務歴を車外に表示してはどうかと提案すると、意見が割れた。

「賛成。熟練と新人の運転手に差があるのは歴然で、利用者に理解してもらうことは有用。高齢者だから敬遠されるとは思われない」(日の丸リムジン)

「賛成。お客様が安心してご乗車いただけるなら表示するべき」(三和交通)

 一方で、

「反対。乗務員の個人情報を表示するのを避けたいため」(遠鉄タクシー)

「反対。表示したところで確認して取捨選択するお客さんはいないのではないか。夜は見えないし、意味があまりないのではないか」(相模中央交通)

「反対。必ずしも年齢が事故に直結するとは考えない」(日本交通・鳥取)

 という反対意見も多かった。

※週刊ポスト2017年2月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン