スポーツ

がんと戦う竹原慎二氏「闘病は弱気なぐらいがちょうどいい」

がんと戦う竹原慎二氏

 医療の進歩により、がんになった後も以前と変わらぬ人生を送れる人が増えている。元WBA世界ミドル級チャンピオンの竹原慎二氏(45)は、復活の真っ只中にいる。

 2014年2月の膀胱がん発見時には、すでに腫瘍が2.5cmに成長し、粘膜の中にも拡大していた。骨盤リンパ節にも2か所の転移が見つかる「ステージIV」で、5年生存率は40%以下。医師からは膀胱の全摘出を勧められたが、竹原氏は頑なに拒否した。

「だって摘出したら、ストーマ(人工膀胱)の装着が必要になるんですよ。40代前半で膀胱がない、尿が溜まる場所に違和感を覚えるなんて、想像しただけでも絶対に嫌だった」

 しかし、全摘以外の選択肢を提案する病院はなかった。僅かな可能性にかけて東大病院の最先端手術を受けることを決めた。

「全摘は免れないけど、全摘後に自分の腸を使って体内に『新膀胱』を作れば、ストーマを付けずに済むと説明されたんです。開腹手術も手ブレ防止機能で細かい作業が正確に行なえる手術支援ロボット『ダヴィンチ』を選びました。これだと手術痕が小さくて済むからです。とにかく術後の生活に極力影響を残したくなかったんです。住宅ローンもあったし、仕事も続けたかった」

 元世界チャンピオンらしく不屈の闘志でがんと戦っているのかと思えば、そうではない。

「僕はめちゃくちゃネガティブな性格なんです。でもその弱気こそが強さの秘訣で、ボクシングの時も“次の試合、絶対に勝てないなァ……勝てないから練習しよう”って奮起できるんです。がんも一緒。“死ぬかもなァ……死にたくないから頑張ろう”って」

 手術から2年半が経過した今は「死ぬまでにやりたいリスト」を書き、がんの再発に怯えつつも、前向きに人生を送っている。

「『東京オリンピックを観るぞ!』、『娘の結婚式に絶対出るぞ!』とかね。その中のひとつに『もう1度ホノルルマラソンを走る!』があったんですが、昨年末に実現できました。しかも9年前に走った時より1分早かった(笑い)。

 今は尿意を感じないので、定期的にトイレに行って排尿しなきゃいけないけど、不便はそれぐらいで普通の暮らしはできています。だから油断しちゃうんです。最近は夜にお酒を飲み歩いたりワガママな自分が出てきて……もっとネガティブにならないとダメだね(笑い)」

 支えてくれる妻に叱られながら、現在もタレント活動を精力的に続けている。

【プロフィール】たけはら・しんじ/元プロボクサー。1972年広島県生まれ。1989年にプロデビューし、1995年に日本人初のWBAミドル級王座獲得。現在は「竹原慎二&畑山隆則のボクサ・フィットネス・ジム」で指導も行なう。

撮影■北村崇

※週刊ポスト2017年2月24日号

関連記事

トピックス

次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン