さらに取材を進めると、アリババが日本でのビジネスを拡大する上で、巨大な土地・建物の必要に迫られている分野があることがわかった。ネットワーク機器やサーバーを設置するデータセンターだ。
アジア各国のビジネス情報を発信する通信社・NNAの記者で、中国のIT事情に詳しい山谷剛史氏が語る。
「アリババはクラウド・サービスでも中国首位で、海外にクラウド事業を積極展開している。日本でも昨年5月にソフトバンク(アリババの28%の株を持つ大株主)と合弁でSBクラウドを設立した。クラウド用のデータセンターを日本でも稼働させようというわけです。
こうしたデータセンターは熱を発する無数のサーバーを並べるから、寒冷な北国に設けるケースが多い。東京であればメンテナンス技術者を配したりするのに便利な代わりに、強力な空調設備でサーバーを冷却しなければなりません」
いってみればサーバーはマグロと同様に“冷蔵”が欠かせないわけだ。
豊洲新市場の巨大な冷凍倉庫がそのまま転用できるかはさておき、全館に最新の空調設備が備えられているのは確かだ。生活雑貨を保管する物流倉庫にはオーバースペックなので、より“データセンター向き”といえるだろうか。もちろん、サーバーを置くだけなら地下水の汚染があったとしても問題にならない。
実際、豊洲新市場に隣接する敷地には、東京電力が建設した世界最大級のデータセンター(約14万平方メートル。現在はSECOMが株式の過半を取得)が建つ。豊洲新市場(40万平方メートル)がデータセンターに生まれ変わるのであれば文字通り世界最大になる。
アリババが出資したSBクラウドがサービスを開始したのは昨年12月15日、その3日後に小池・マー会談が行なわれている。これは偶然の一致だろうか。
※週刊ポスト2017年3月10日号