2月14日には市民1万人以上が市政府前広場で大規模な集会と抗議活動を行った。市政府は数百人の警察官を動員し、市民らを数十台の警察車両で囲み、厳戒態勢を敷いた結果、一部で小競り合いが発生するなど険悪なムードが漂った。
その後も市民らは反対運動を展開し、中国版ツィッター「微博(ウェイボ)」で、反対運動の状況を逐一報告。その結果、市政府は2月19日、住民の意向を受け入れて「工場建設は当分の間、凍結する」と発表し、事実上のプロジェクトの撤回措置をとった。
これについて、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は次のように指摘する。
「中国では環境汚染の拡大を助長する工場建設に反対する市民運動が広がりを見せているが、地方政府が全面的に住民側の意見を受け入れるのは極めて珍しい。この背景には、経済建設優先政策によって、都市部に限らず、全国的に環境被害が拡大していることがある。
このため、企業のみならず、許認可権限を持つ自治体に対して、全国から厳しい批判が寄せられており、李克強首相や習近平国家主席ら中央の指導者も環境保護を重視している姿勢が徐々に功を奏しつつあるようだ」